写真1●富士ゼロックスの保守担当者が2013年4月から利用を始めたタブレット端末
写真1●富士ゼロックスの保守担当者が2013年4月から利用を始めたタブレット端末
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写真2●タブレット端末を用いた新システム「COMPASS(コンパス)」で業務プロセスを変革する
写真2●タブレット端末を用いた新システム「COMPASS(コンパス)」で業務プロセスを変革する
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 富士ゼロックスは2013年4月初めから、顧客企業のオフィスに設置された同社のデジタル複合機の保守業務を担当する「カストマーエンジニア」全員に、合計で約3000台のタブレット端末を配布し、業務プロセスの変革を始めた(写真1、2)。保守に関わる付帯業務の一部をタブレットを使った新システムで自動化し、浮いた時間を顧客への提案活動に使う。

 4月9日に日本マイクロソフトがWindows XPのサポートを1年後の2014年4月9日までと発表したことを受けて、富士ゼロックスはカストマーエンジニアの業務時間の一部を、当面は顧客企業のパソコン環境の移行支援に充てる方針だ(関連記事:Windows XPサポート終了まで1年、日本マイクロソフトが最新OSへの移行支援を強化)。新システム導入を指揮する張替鋼一執行役員ソリューション・サービス運用本部本部長が社内のキックオフ式で表明した。

 富士ゼロックスはタブレットから顧客にアンケートに答えてもらうだけで、その場で簡単な移行プランを提示できる「PC環境 最適化診断」というツールも用意した。

 富士ゼロックスは1日5~6件の顧客を訪問するカストマーエンジニアの仕事を「単なる複合機の保守業務から、顧客の困り事対応全般に広げていく」(張替執行役員)ことを目指している。それには業務プロセスの見直しが必須だと考えた。

 そこで2012年7月から、福島県などで合計で約300台のタブレットを使った業務プロセス変革のトライアルと調査を進めてきた。その結果、カストマーエンジニアは「顧客を訪問する前の情報収集や帰社後のデータ入力などに、1日30分以上を費やしていたことが分かった。この部分をタブレット経由で自動化したり、電子化したりして効率化した」(張替執行役員)。年間で換算すれば、少なくとも1人当たり100時間以上の無駄を省ける計算になるという。

 この時間を顧客への提案活動に回そうというのが、今回の最大の狙いである。そのために開発したのが、社内の各種データベースから顧客情報などを自動収集し、訪問前までにタブレットに表示できる新システム「COMPASS(コンパス)」である。訪問の順番を決めるスケジュール情報に基づいて地図を表示したり、保守サービスの内容やこれまでのコンタクト履歴もタブレットに自動的に表示したりできる。

 訪問した後の対応履歴は、その場でタブレットに入力すればよく、帰社後にパソコンから再入力するといった手間はなくなった。顧客には複写式の紙で保守レポートを手渡していたが、この部分もタブレットで電子化。顧客はいつでもネットでレポートを確認できるようにした。

 顧客が紙でのレポート提出を求めてきた時だけ、複合機にタブレットをUSBで接続し、必要なページだけを印刷して手渡す。これで年間で約2000万円の紙代の削減にもなる見通しだ。

 タブレットは7インチと10インチで、合計3種類用意した。より多くの時間を顧客へのプレゼンテーションに使いたいカストマーエンジニアは、多少重くても大きな画面のタブレットを利用できる。いずれもOSはAndroidで、ペン入力にも対応している。

 全国の保守業務で、3000台規模のタブレットを導入したのは富士ゼロックスが最初になるという。