日本ヒューレット・パッカードは2013年3月22日、製品選択の工夫によって従来製品よりも導入コストを抑えたVDI(デスクトップ仮想化)システムパッケージ「Server-VDI」を発表、同日販売を開始した。参考価格(税別)は、ソフトウエア/ハードウエア一式に3年間分の保守費用を含み、100ユーザー構成で570万円(1ユーザー当たり5万7000円)など。

 VDIを実現するシステム一式を組み合わせたパッケージ製品の1つ。最大の特徴は、製品の組み合わせを工夫して、費用を低く抑えることに注力している点。具体的には、仮想デスクトップにサーバーOSの「Windows Server 2008 R2」を、VDIソフトにイスラエルEricom Softwareの「PowerTerm WebConnect」(関連記事)を採用した。さらに、小規模向けでは、高価な共有ストレージの代わりにサーバー内蔵ドライブを使ってストレージ費用を削減した。

 価格を低く抑える工夫の1つは、仮想デスクトップとしてWindows Server 2008 R2を使うこと。Windows Serverのマルチユーザー機能であるTerminal Servicesをベースに、クライアントOSのような見栄えを実現するデスクトップエクスペリエンス機能を利用する。この方法の場合、クライアントOSを動作させるわけではないので、クライアントOS用のライセンス「Windows VDA」(Virtual Desktop Access)が要らないというメリットがある。VDAライセンスは、一般的なVDIシステムの導入費用の約3割を占めるという。

 もう1つの工夫は、VDIソフトにPowerTerm WebConnectを使うこと。これにより、Windows Server標準のVDI機能や仮想化ベンダーのVDIソフトよりも安価にVDIを実現できる。同ソフトの価格は、国内販売代理店のアシストの場合、1ユーザー当たり7440円(指名ユーザーで1000人以上の場合)~1万7640円(同時アクセスで99人以下の場合)である。「VDAライセンスが要らない低価格VDIシステムを企画した際に、より価格を下げられる安価なVDIソフトとして、PowerTerm WebConnectを選んだ」(日本HP)としている。

 なお、PowerTerm WebConnectの機能面での特徴は、利用形態が柔軟であること。提供する中核機能は、操作対象のデスクトップと操作端末を1対1でひも付けて管理するデスクトップブローカー機能である。画面操作プロトコルにはWindows標準のRDPを使う。この上で、RDPプロトコルを圧縮してRDP通信を5~25倍に高速化するEricom Blaze機能を提供する。PowerTerm WebConnectを仲介することで、HTML5対応ブラウザーによる画面操作も可能。

20/50/100ユーザーの小規模構成と1000ユーザー構成を用意

 Server-VDIは、ユーザー数に応じたリファレンス構成を作成済み。100ユーザー以下の小規模を想定した構成は、単体パック3種類(20、50、100ユーザー向け)と拡張パック(準備中)を用意。小規模向けのハードウエア構成上の工夫点は、外部接続ストレージを使わずサーバー内蔵のローカルドライブ(SSD/HDD)にデータを保存すること。一方、1000ユーザー規模の構成も用意した。こちらは、システム管理ソフト「HP CloudSystem Matrix」を使い、仮想環境の動的なプロビジョニング(配備)などを可能にしている。

 具体的なシステム構成の例は、以下の通り。最も小規模となる20ユーザー時は、システム一式で208万1400円。この場合のPCサーバーのスペックは、ベースシステムが「ML350e Gen8」(7万7000円)で、CPUはXeon E5-2407 2.20GHz×1、メモリーは48Gバイト、ストレージはSSDが100Gバイト×4、ハードディスクが300Gバイト×4台、である。

 20ユーザー時のソフトウエアのライセンス価格は、以下の通り。OSは「Windows Server 2012 Datacenter Edition」(OEM版)が40万円、「Windows Server 2012 RDS CAL 5ユーザー」×4(20人分)が20万4000円、「Windows Server 2012 CAL 5ユーザー」×4(20人分)が6万4000円。VDIソフトは、「Ericom PowerTerm WebConnect DeskView指定ユーザライセンス」(20人分)が19万4400円、「Ericom PowerTerm WebConnect DeskView初年度保守料」(20人分)が3万5000円。

 なお、1000ユーザー規模(1200ユーザー時)の価格は、1億1968万5760円で、構成要素は以下の通り。PCサーバー費用は、5068万4000円。外付けの共有ストレージは、568万4000円。ネットワークスイッチは、376万6000円。システム管理ソフトは、1974万400円。OSは、Windows Server 2008 R2とCAL/RDS CALが、1200人分で2200万円。VDIソフトは、1781万1360円。