写真●中国ファーウェイの通信インフラ系の展示ブース
写真●中国ファーウェイの通信インフラ系の展示ブース
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 Mobile World Congress(MWC)は、各通信機器ベンダーと世界の通信事業者が商談する場としての性格も強い。一般の来場者や競合の通信機器ベンダーが入場できないホスピタリティーエリアも多数存在し、各ベンダーはこのエリアにおいて、真に力を入れる数年先を見越した製品やソリューションを展示しているケースが多い。この“裏側”のエリアを見なければ、MWCの本当の姿を把握したことにはならないわけだ。

 幸い報道関係者は、このような裏側のエリアを見ることができる。ただ、中国のファーウェイはガードが固く、これまでのMWCでは報道関係者であっても、このエリアに入場させなかった。それがMWC2013では、他のベンダーと同様に報道関係者に入場を認めた(写真)。残念ながら細部の写真撮影は不可だったが、展示内容からはファーウェイが考える携帯インフラの進化の方向性や開発状況が見えてきた。その様子をお伝えしよう。

5G技術としてビームを絞るアプローチに注目、無線で50Gbpsも

 まず無線アクセス機器の分野では、より効率的な設備投資を可能にするための装置共通化の取り組みを紹介。今年出荷するボードではソフトウエアを変更するだけで、3GとLTE、それぞれに対応できるようになったという。既にベースバンドユニットは共通化されているが、その中のボード自体はこれまで3GとLTEでは異なっていた。

 将来の研究開発としては、LTE-Advancedの先の3GPP Release 12で議論されている、いわゆるLTE-B技術についても紹介していた(関連記事)。

 他社と同様に、スモールセル局はユーザーデータの伝送のみに特化し、制御信号などコントロール系の機能はマクロセル側に任せてしまうアーキテクチャーについて、既に研究開発を進め、上海で実証実験も予定しているという。

 さらに、その先の第5世代(5G)の技術の方向性についても触れていた。同社が展示していた「UltraNode」という基地局装置は、アンテナ素子をたくさん基地局に持たせ、それぞれの素子から指向性の高いビームをエリア内のそれぞれのユーザーに直接照射するような技術を使う。これによって、同社の研究では50Gビット/秒程度のスループットまで期待できるという。

64倍の負荷集中にも耐えられるというコア装置の工夫

 携帯コア網の装置では、既に出荷済みの同社の製品群に施された耐障害性を高める取り組みが紹介された。スマートフォンの増加によって、日本の携帯電話事業者においても大規模な障害が頻発するようになった。その大部分は携帯コア網に制御系の負荷が集中することによって起きている。同社の製品群は、このような状況を想定し、通常の64倍もの負荷集中に耐えられる設計になっているという。

 一般的に負荷が増えるのは、つながらない端末がリトライを繰り返し、バースト的に接続要求が膨れ上がるケースだ。そこで同社の製品では、例えばMME(Mobility Management Entity)のような制御系のノードに負荷が集中した場合、単位時間当たりに一定回数しか接続させない、インターネットへの接続は制限するが無線へのアタッチは開放せず、リトライを防ぐといった工夫を施しているという。そして実際に64倍の負荷実験を実施したうえで、製品を出荷していると話す。

 仕組み上、どうしても負荷が集中する加入者データベース(HLR)についても、保護機能を用意している。HLRにアクセスするゲートウエイ装置(SGSN)について、HLRへの接続要求の失敗が増えてきた場合、動的にゲートウエイ装置からHLRへのアクセスを可能にするしきい値を変更できる仕組みを備えているという。