ソフトバンクモバイルは2013年2月14日、LTE-Advancedの「基地局間協調伝送技術」に関する実証実験を実施したと発表した。基地局間協調伝送とはセルの“谷間”にいるユーザーの通信品質を高めるための技術で、実際に下りの伝送速度を約2~3倍向上できることを確認できたという。商用展開は未定としている。

 実験は2012年5月から東京都江東区台場周辺で実施しており、現在も継続中。基地局間協調伝送技術には、3GPP Release 11で標準化されている(1)Coordinated Multi Point transmission(CoMP)と、(2)Enhanced Cooperative-LTE(ECO-LTE)と呼ぶ独自方式の両方を利用した。

 (1)CoMPは隣接する複数の基地局が協調し、両方の基地局から同時に携帯電話へ同一信号を送信するもの。同技術を用いることで、セル境界における下り伝送速度が約2~3倍向上することを確認できた。

 これに対して(2)ECO-LTEは、CoMPと同様、隣接する複数の基地局が協調するが、電波の状況が悪い方の基地局からは携帯電話への信号の送信を一時的に止める。これにより、セル境界にいる携帯電話は、電波の状況が良い方の基地局からの信号だけを掴めるようになる。

 同技術はソフトバンクモバイルが開発したもので、「ECO-LTE」の名称も同社における基礎実験システム名に過ぎないという。こちらの実験ではセル境界での下りの伝送速度が約2倍向上することを確認できた。CoMPに比べれば効果は劣るが、ECO-LTEは端末の変更が不要で、基地局に制御ソフトを追加するだけで導入できる。現行のLTEシステムにも応用可能としている。

 ソフトバンクモバイルは同技術を総務省の「電波資源拡大のための研究開発」プロジェクトに提案して採択され、「異なる大きさのセルが混在する環境下における複数基地局間協調制御技術の研究開発」として実証実験を進めていた(関連記事)。