図1●Cortex-A57の構成(ARMの資料より引用)
図1●Cortex-A57の構成(ARMの資料より引用)
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図2●Cortex-A53の構成(ARMの資料より引用)
図2●Cortex-A53の構成(ARMの資料より引用)
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 英ARMは、同社製品として初となる64ビットプロセッサ「Cortex-A50」シリーズを発表した。2011年10月に発表した64ビット処理向けのアーキテクチャ「ARMv8」に対応する。スマホやタブレット端末、サーバーなどの用途に向ける。2014年には同CPUを搭載したチップが登場する見込みである。

 Cortex-A50シリーズは、既に韓国Samsung、米Broadcom、米Calxeda、中国HiSiliconなどがライセンスを受けている。加えて、4日前にARMプロセッサ市場への参入を表明した米AMD(関連記事)も、このCortex-A50のライセンスを受けていることが明らかになった。

 ARMv8に対応したサーバー向け64ビットARMプロセッサとしては、今回、ARMが発表したCortex-A50シリーズ以外にも、米NVIDIAが開発中の「Denver」などがある。NVIDIAはARMのアーキテクチャライセンスを保有しているため、DenverはARMv8互換の独自マイクロアーキテクチャだが、AMDのARMプロセッサはARMの製品をそのまま利用する形となった。

大小のプロセッサを組み合わせる「big.LITTLE」技術に対応

 Cortex-A50シリーズは、2種類のプロセッサから成る。最大性能を重視した「Cortex-A57」、電力効率を重視した「Cortex-A53」である。Cortex-A57(図1)は3命令同時発行でout-of-order実行、Cortex-A53(図2)は2命令同時発行でin-order実行である。いずれも最大数GHzで動作する。

 電力の低さが重要となるスマホ向けSoC(System on a chip)では、これら2種類の異なるプロセッサを組み合わせ電力効率を高める技術「big.LITTLE」を利用する。big.LITTLE技術はもともとARMの32ビットプロセッサ向けに開発された技術だが、64ビットプロセッサでも利用する。サーバー用途では、いずれも16コア以上の構成に対応する。

Red Hatなどが64ビットARM版を開発中

 ARMv8に対応したOSは、米Red Hatなどが開発中である。Cortex-A50を搭載したチップが登場する2014年ころには、「Fedora 19」を基にしてARMv8対応のディストリビューションを投入するという。なお、2011年10月のARMv8の発表時には米Microsoftがコメントを寄せており、Windows系OSも64ビットのARMプロセッサに対応する可能性がある。

 Cortex-A50シリーズは、「AArch64」と「AArch32」という二つの実行モードがあり、AArch32モードでは、既存の32ビットARMプロセッサ向けのソフトウエアをそのまま動作させることができる。このため、Cortex-A50シリーズでは、64ビットOSと32ビットOSのいずれも動作が可能である。