米国サンタクララで開催中の「Open Networking Summit 2012」(関連記事)では、SDN(Software Defined Network)のさまざまなユースケースが紹介され、従来コンセプト先行だったSDNが実用段階に入ったことを強く印象づけた。
事例のなかでも特に注目に値する発表を行ったのは米グーグルだ。2012年4月17日のキーノートセッションに登壇した同社シニア・バイスプレジデントのUrs Holzle氏(写真1)は「グーグルのデータセンター(DC)間のトラフィックは、OpenFlowを用いて作ったSDNで既に100%運用している」ことを明らかにした。おそらく現時点で世界最大級のSDN/OpenFlowネットワークだろう。
グーグルは二つのバックボーンを持っているという。一つはユーザーサービスのトラフィックを運ぶ外向けのネットワーク(I-Scale)、もう一つは同社のデータセンター間のトラフィックを運ぶインターナルのネットワーク(G-Scale)だ。今回、OpenFlowを用いてSDN化したのは後者のインターナル向けのG-Scaleである。
グーグルがバックボーンをSDN化した理由は、「ネットワーク制御を集中化したかったため」(Holzle氏)。個別のネットワーク機器ごとにモニタリングや管理、運用していては非効率だからだ。
グーグルのSDN構築は2010年春に始まった。まずはチップを購入し、OpenFlowをサポートするネットワークハードウエアを自作した(写真2)。100ポートの10Gビットイーサーネットを備え、オープンソースのルーターソフトである「Quagga」をベースにBGPやISISといったプロトコルをサポートする。ただ機能的にはこの程度であり、かなり割り切った作りになっているようだ。第1段階として、これらの機器を既存のルーターのように運用していたという。
続いてこれらの自作のOpenFlow対応機器をコントロールするSDNの開発も始めた。こちらも2011年中ごろまでに完成。最終的に2012年1月までに、データセンター間のトラフィックのすべてをSDNによって賄うようになったという(写真3)。
Holzle氏は、SDNによって運用しているインターナルのネットワークについて、「非常に安定しており、ほぼ問題ない」と話す。自在なネットワークパスの設定に活用しているほか、ソフトウエアベースで事前テストがしやすいメリットもあるという。ただしコスト効果の測定などは、時期尚早として明言を避けた。
Holzle氏はこれらの取り組みから、「OpenFlowプロトコルは基本的な仕様しか備えていないが、これでも十分。OpenFlowは実運用の段階に入った」と結論付けた。
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