写真●記者会見する日本IBMの橋本孝之現社長(左)とマーティン・イェッター新社長(右)
写真●記者会見する日本IBMの橋本孝之現社長(左)とマーティン・イェッター新社長(右)
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 日本IBMは2012年3月30日、米IBMのコーポレート・ストラテジー担当バイス・プレジデントで独IBM会長も兼務するマーティン・イェッター氏が2012年5月15日付で社長に就任すると発表した。橋本孝之社長は、5月15日付で代表権のない会長となる。

 金融危機後にクラウド事業やスマートシティー事業の立ち上げなど、「IBMが全社的に進める『スマーター・プラネット』の第一フェーズが完了したため」(橋本社長)、経営体制を刷新する。IBMグループが抱えるグローバル人材やノウハウ、技術力などを日本法人テコ入れに生かすため外国人社長を起用する。

 日本IBMの社長に外国人が就任するのは二人目で、56年ぶりとなる。

 スルガ銀行の勘定系システムの開発失敗を巡り、日本IBMに74億円超の賠償命令が出た3月29日の判決(関連記事)や、日本IBMの業績低迷による引責辞任の見方については、橋本氏が「今回の人事とは全く関係ない」と否定した。

 橋本氏は2009年1月に社長に就任。世界のIBMに先駆けて専任組織によるクラウド事業を日本で立ち上げ、日本企業のグローバル化を支援するITサービスの本格提供を開始。北九州市や石巻市でスマートシティー事業などを展開した(関連記事:既に始まっている「スマート化」,情報通信はもっと世界を変えられる 日本IBM社長 橋本孝之氏 編集長インタビュー)。

 ただ、金融危機以降の厳しい経営環境が続くなかで成長回復への道筋は付けられず、日本IBMは2009年12月期(関連記事)、2010年12月期(関連記事)ともに減収が続いていた。

 イェッター氏は、1986年に独IBMにエンジニアとして入社。2006年11月の独IBM社長への就任後は組織再編などの業務改革で手腕を発揮。2011年5月に米IBMのストラテジー担当バイス・プレジデント兼エンタープライズ・イニシアチブ担当ゼネラル・マネージャーへ就任し、IBMの全社戦略などを担当する。

 同日会見したイェッター氏は、「経済環境の変化は激しく、企業や政府、官公庁などあらゆる組織は自ら変革していく必要がある。IBMが持つグローバルでのリソースを活用し、日本の顧客のグローバル化を支援したい」と語った。

 日本IBMは、イェッター氏が社長に就任する5月15日に合わせて、新社長としての戦略発表を行う予定である。