システム開発が失敗した責任の所在を巡り、ユーザー企業とITベンダーが司法の場で争ったスルガ銀行と日本IBMの裁判。東京地方裁判所の高橋譲裁判長は、ITベンダー側である日本IBMの責任を重く認定し、74億1366万6128円をスルガ銀行に支払うよう命じた(関連記事)。

 2012年3月29日時点で東京地裁が公開したのは判決の主文のみ。判決理由は明らかになっていない。判決に先立ち、日本IBMが東京地裁に判決書の閲覧制限を申立てたためだ。

 東京地裁が主文で示した訴訟費用の負担割合は、スルガ銀行の1に対して日本IBMが5である。スルガ銀の主張を全面的には認めなかったものの、開発失敗の責任の多くを日本IBMに求めた東京地裁の判断が読み取れる。

 今回の裁判の発端は、スルガ銀行が勘定系システムを全面刷新するため、2004年9月に日本IBMと「新システムを95億円で開発する」との基本合意書を交わしたことにある。勘定系パッケージ・ソフト「Corebank」を日本向けにカスタマイズするという日本IBMの提案を採用した。1回目の要件定義を経て、両社は2005年9月に「89億7080万円で新システムを開発する」との最終合意書を交わした。

 裁判の争点の一つは、2005年9月に交わした最終合意書の法的拘束力にあった。スルガ銀は「89億7080万円」という開発金額と「2008年1月」という稼働時期を明記したこの合意について「完成したシステムに対し代金を支払う請負契約だ」と主張。システムが完成できなかったのは日本IBMが債務を履行しなかったためとし、個別契約に基づき支払い済みの60億円超を含む111億700万円の損害賠償を請求した。これに対して日本IBMは、「開発局面ごとの個別契約は履行している。契約上の義務は果たした」と主張していた。その後、スルガ銀行は損害額を精査し直し、賠償請求額を115億8000万円に引き上げている。

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■変更履歴
記事の最後に、賠償請求額の引き上げについて追記しました。[2012/3/29 20:00]