米国の携帯電話通信事業者、T-Mobile USAの買収を目指す米AT&Tは現地時間2011年12月1日、米連邦通信委員会(FCC)が公表した調査レポートに反論する声明を出した。「都合の良い事実だけを取り上げた一方的なもの」としており、FCCを非難している。

 レポートは、加入者ベースで米国第2位と言われるAT&Tが、同4位のT-Mobile USAを買収することの市場への影響を調査したもので、「(買収が)健全な市場競争を脅かし、米国民の職を奪う」と結論付けている。これに対しAT&Tは、「FCCの主張を正当化する事実だけを取り上げ、そうでない事実は無視している。注意深さや熟考、公平性を欠いている」と反発している。

 AT&TによるT-Mobile USAの買収計画をめぐっては、米司法省(DOJ)が独占禁止法違反に当たるとして訴訟を提起している。FCCも聴聞会を開く意向を示すなど買収阻止に向けた動きを見せたため、AT&TとT-Mobile USA親会社のドイツDeutsche Telekomは「司法省からの承認を勝ち取るために注力する」ことを理由に、FCCへの認可申請をいったん取り下げた。両社は司法省の訴訟が終わった後に認可申請を再提出する計画と説明している(関連記事:AT&T、FCC相手取り訴訟も辞さない構え、T-Mobile USAの買収計画で)。

 AT&Tは、買収が成立しない場合、Deutsche Telekomに支払うことになる違約金に備え、40億ドルの税引き前損失を計上することも明らかにしているが、その一方であらゆる手を尽くして計画を成功させる意向だと報じられている。米Wall Street Journalは、AT&TがT-Mobile USA資産の一部を競合企業に売却する検討に入っており、米国第6位の通信事業者、Leap Wireless Internationalと交渉中と伝えている。

[AT&Tの発表資料]
[FCCの調査レポート(PDF文書)]