HOYAは2011年7月29日、IFRS(国際会計基準)に基づく2011年4-6月期(2012年3月期第1四半期)決算を公表した。同社は11年3月期からIFRS(国際会計基準)を任意(早期)適用している(関連記事)。同日に開催した証券アナリスト・投資家向け説明会で、鈴木洋 代表執行役CEO(最高経営責任者)は「日本でIFRSの考え方が浸透するには時間がかかる」と語った。

 同社が5月に開催した11年3月期決算説明会(関連記事)では、IFRSと日本基準との違いを説明した表を添付したが、今回はIFRSに基づく資料・説明のみ。営業利益や経常利益は示さず、「売上収益」「税引前利益」「四半期利益」「親会社の所有者に帰属する四半期利益」「四半期包括利益合計額」などを連結経営成績として開示した。

 ただし、11年3月期決算説明会と同様に、継続事業だけでなく、非継続事業、全事業に関する四半期連結包括利益計算書(損益計算書に相当)を補足資料として添付した。「IFRSでは継続事業を主体としている。しかし、それだけでは事業全体の状況を把握しにくい。そこで非継続事業を含めた全体の業績を補足した」と、江間賢二 執行役CFO(最高財務責任者)は説明する。全事業に関する四半期連結キャッシュ・フロー計算書も補足資料で示した。

 同社は10年4月28日付で、HDD関連のメディア事業を米ウェスタン・デジタルに売却することで合意し、同6月30日付で契約を実行した。このため、同事業は前年同期(10年4-6月期)で非継続事業となる。また、11年7月1日付でデジタルカメラを中心とするペンタックス事業をリコーに譲渡することで契約を締結、同10月1日付で契約を実行する予定。同事業については、11年4-6月期で非継続事業に分類し、前年同期を遡及修正している。

 説明会では「IFRSに基づく決算書は分かりにくい。開示という面では後退しているのではないか」との意見が出た。これに対し、江間CFOは「当社として会計の物差しを統一する意味は大きい。2008年4月から、管理会計用途で予算の意思決定などに使っている」と社内でのメリットを指摘する一方で、「投資家をはじめとするステークホルダー(利害関係者)にとって使いにくい面があるのは確か」と認めた。

 鈴木CEOはIFRSを「これまでと違う巻尺」と表現する。「新たな巻尺が出てきたが、それをどう使っていけばよいかに関するコンセンサスがまだ存在していない。IFRSを適用する会社がもっと増えて、IFRSをどう使えばよいか、特損(特別損失)のような考え方をIFRSに入れていくかなどの考え方がまとまって初めて、使い勝手の良い道具になっていく。それには時間がかかるのではないか」と鈴木CEOは話す。

 江間CFOは「IFRSに基づく開示は既定のフォーマットなので、当社だけではいかんともしがたい部分はある。それでも、道具として立てつけが良くない部分を直していくための協力は惜しまない。私も汗をかいていくつもりだ」と意欲をみせる。

 11年4-6月期における同社の連結業績は、売上収益が前年同期比1.2%減の931億6400万円、四半期利益が同35.3%減の153億6000万円、四半期包括利益合計額が同135.8%増の120億7000万円。鈴木CEOは「第1四半期の業績は良くなかったが、全体として東日本大震災の影響は軽微。震災の影響を受けた事業も第2四半期には元に戻るだろう」との見方を示した。