HOYAは2011年5月10日、IFRS(国際会計基準)に基づく11年3月期決算を公表した。同社は11年3月期からIFRSを任意適用(早期適用)することを表明済み(関連記事:HOYAが11年3月期からIFRSを任意適用、日本企業で4社目)。従来の日本基準に基づく決算との継続性を考慮して、IFRSと日本基準との違いを詳細に説明した表を添付したほか、補足資料として非継続事業を含む全事業に関する包括利益計算書(従来の損益計算書に相当)を示した。江間賢二CFO(最高財務責任者)は「手間は決算書を二つ作るのと同じだった」と語る。

 同日に実施したアナリスト・投資家向け説明会で、江間CFOは日本基準に基づく従来の決算書と比べ、IFRSに基づく決算書は(1)科目(例えば、資産に「のれん」の区分を追加)、(2)認識・測定方法(例えば、固定資産の償却処理を定率法から定額法に変更)、(3)表示方法(例えば、財政状態計算書=従来の貸借対照表で、固定資産を一番上に表示)などが異なる点を指摘した。

 さらに強調したのは、包括利益計算書が継続事業に関してのみを対象としていることだ。「将来を予測するという用途を考えると、止めた事業(非継続事業)の実績が入っていると難しくなるという考え方だと理解している」(江間CFO)。その一方で、「継続事業だけを対象とすると、会社全体としての業績がどうだったかが見えなくなる」(同)。このため、独自に継続事業と非継続事業を合わせた包括利益計算書を作成した。今後も全事業の包括利益計算書を作成するかどうかは「アナリストや投資家などの意見を聞いて判断する」と江間CFOは話す。

 同説明会で鈴木洋CEO(最高経営責任者)は、IFRSについて「製造業の状態を表すやり方としては、悪い考え方ではないと思う。継続事業だけの変化をみるというのも、前向きに捉えてほしい」と語った。一方で、「バランスシートで表しきれない情報が注記に流れ込んでいたり、従来からの継続性の問題があったりして、受け入れるのは最初は難しいかもしれない。今後はIFRSで会社の状態を表すことになるのでご理解いただきたい」とする。

 HOYAは並行開示期間にあたる10年3月期はIFRSと日本基準のそれぞれに基づく連結決算報告書を公表していた。11年3月期はIFRSに基づく連結決算報告書のみを公表した。四半期報告についても、同日発表した11年1~3月決算は日本基準で公表したが、11年4~6月以降はIFRSで公表する。11年3月期は連結売上高が4133億4900万円(前年比2.7%増)、当期利益が595億7900万円(同43.5%増)、当期包括利益が465億4900万円(同2.1%減)だった。