写真●UQコミュニケーションズの野坂章雄社長
写真●UQコミュニケーションズの野坂章雄社長
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 2011年7月6日、大手町でWiMAX 2のフィールドテストを報道陣に公開したUQコミュニケーションズ。実フィールドで100Mビット/秒超の伝送速度が出ることを見せ、WiMAX 2の実力の一端を示した形だ(関連記事)。一方で予想以上のトラフィックの伸びから、同社の事業が曲がり角を迎えつつあることも明らかになってきた。そんなUQコミュニケーションズの野坂章雄社長(写真)に単独インタビューし、WiMAX 2導入の狙いを聞いた。

2010年に開催した説明会では、携帯電話事業者のモバイルブロードバンドサービスに対する優位性を主張し、モバイルWiMAXは帯域にはまだ余裕があるとしていた(関連記事:「WiMAXはDC-HSDPAよりも速い」、UQコミュニケーションズがイーモバ対抗を鮮明に)。その状況が変わってきたということか。

 パソコンやルーター、タブレットなど、大容量のトラフィックを発生するデバイスが急速に増えてきた。2011年のユーザーの月間平均トラフィック量は7Gバイトになる予測で、2015年には1.5倍の10.1Gバイトに膨れあがる見込みだ。このままだと、当初計画を超えて2012年度中にもキャパシティがオーバーフローする見込みとなった。特に東京、大阪、名古屋、など都心部が厳しい。データ専業のBWA事業者としてはデータトラフィックを効率的に処理しなければならない。

 容量を増加するには三つしかない。(1)セルを縮小すること、(2)電波利用効率の向上、(3)周波数帯の追加、だ。

 セルの縮小は限界に近づいている。東京駅近傍では基地局間の距離が250メートルくらいになっている。これ以上近づけるとセル間で干渉が発生し、品質が劣化する。そこで(2)電波利用効率の向上としてWiMAX 2の導入、そしてWiMAX 2のために(3)周波数帯の追加、をお願いしたい。

 WiMAX 2を入れる意義は、システム全体を高速化できることだ。電波利用効率を上げながら、ビット単価を下げられ、100Mビット/超のサービスを実現できる。高速移動にも対応する。具体的にはWiMAX 2をトラフィックが集中するエリアにオーバーレイしていきたい。

携帯電話事業者は、トラフィック対策として帯域制御を実施している。帯域制御を実施する予定はあるのか。

 これまでもUQでは帯域制御を実施していない。ストレスのないサービスを提供するために、できる限り導入は避けたい。そのためにWiMAX 2という新しい技術の導入を進めたい、というのが今回のフィールドテストの目的だ。モバイルWiMAXは日本が世界の先頭を走っている。WiMAX 2を導入することで、日本発で世界を引っ張れるという意義もある。

トラフィック急増から定額制を見直す動きも出てきている。

 WiMAX 2では、デバイス別のプランや一部で従量料金も考えていきたい。データ量は多いが利用頻度は少ないといったケースもある。その当たりは従量料金にしていくことも考えなければならない時代に入ってきた。またコンテンツ・プロバイダーとの提携による、いわゆる“Amazon Kindle”型のサービスも検討している。