IFRS財団は2011年2月10日、東京都港区で評議員会を開催し、同財団にとって初めてとなる地域事務所を東京に置くと決定した。地域事務所はアジア・オセアニア地域の関係者とIFRS財団が直接、連絡を取り合える環境を作ることが目的としている。IFRS財団はIFRS(国際会計基準)を策定するIASB(国際会計基準審議会)を支援する団体だ。

 地域事務所にはIFRS財団とIASBの職員を置き、アジア・オセアニア地域で既にIFRSを適用している国や強制適用を予定している国を支援するなどの役割を果たす。

 アジア・オセアニア地域の事務所の誘致は、日本以外には中国が香港を候補地に挙げていたほか、シンガポールも名乗りを挙げていた。日本のFASF(財務会計基準機構)とASBJ(企業会計基準委員会)は積極的に誘致活動を実施し、アジア・オセアニア諸国と話し合うなどしていた。(関連記事1:「IASBのサテライトオフィスの誘致に注力」、IFRS対応会議が表明 、関連記事2:IFRS策定主体への意見発信が重要 課題は世界で活躍できる人材の育成

 評議員会では地域事務所の設置のほか、IASBの議長を務めるデイビッド・トゥイーディー氏から検討状況の報告や、IFRS財団内の課題の検討内容について議論があった。

 トゥイーディー氏からの報告にあったIFRSと米国の会計基準の差異を埋める「MoUプロジェクト」について「本当に終わるのか」との声が会議参加者から多く上がった。IASBは11年6月までに、「金融商品」「収益認識」「リース」「公正価値測定」など九つの基準を公表するとしている。このスケジュールが「現実的なのか」といった疑問の声も上がった。

 これに対してIASB側からは「スケジュール通りに進むよう努力している。新しい基準を策定するわけではなく、既存の基準を見直している。IFRSと米国基準の両者のバランスを、どのように取るかが問題だ」との趣旨の説明があった。

 このほか個別の会計基準についても意見が出た。ファイナンスリースとオペレーティングリースを区別なく、資産計上することを提案しているリースの会計基準について「オペレーティングリースのオンバランス化は、貸借対照表が膨らみ、混乱するのではないか」といった意見が出た。これに対しトゥイーディー氏は、同氏が常に例に挙げる飛行機の機体が航空会社の貸借対照表に計上されないことを引き合いに、「すべてのリースのオンバランス化を進めたい」との趣旨を強調した。