写真●KDDIの田中孝司新社長
写真●KDDIの田中孝司新社長
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 KDDIは2010年12月1日、同日付で新社長に就任した田中孝司氏(写真)の就任会見を開催した。環境が急激に変化するなか、新しいKDDIとしてマルチネットワーク、マルチデバイスをシームレスに利用できるような新たなビジネスモデルを作りたいと説明。それを「スマートなパイプになりたい」と表現した。

 就任会見では、これまで法人を中心としてきたグローバル展開を、コンシューマ分野にも広げる考えも明らかにした。ただ具体的な数値目標などについては明かさず、来期の計画を示す2011年4月の決算会見に改めて発表したいとした。

 田中社長は昨今の環境変化から、「データトラフィックは今後、爆発的に増加する」と説明。このような時代には一つのネットワークだけではデータの増加を支えきれないとする。そこで固定とモバイルに加えて、UQコミュニケーションズのモバイルWiMAX、CATV、無線LANなど複数のネットワークを持つ、KDDIの強みを生かせると続ける。

 KDDIはこれまでも、このようなマルチネットワークの体制を「FMBC(Fixed Mobile and Broadcast Convergence)」戦略として重視してきた。だが「これまではネットワークを横断した割引きサービスが提供できた程度」と、田中社長は反省の弁を語る。今後は、複数のネットワークやデバイス間でシームレスなサービスを提供できるような「真のFMBC」を実現したいとした。

 ネットワークやデバイスをまたいだサービスを実現できるのは、KDDIのような通信事業者に限らない。アップルやグーグルのような端末レイヤーと上位レイヤーのプレーヤーでも構築でき、実際に取り組みを進めている。

 その点について田中社長は「通信事業者はユーザーの位置情報やアドレス帳などを利用しやすい立場にある。通信事業者と(アップルやグーグルのような)上位レイヤーのプレーヤーが一緒になると、より強力なサービスを作れる」と説明。これらのプレーヤーとパートナーシップを組んでいく考えも示した。来年からこのような「真のFMBC」サービスを徐々に広げていくとした。

 複数のネットワークを運用すると当然、コストがかさむ。その点について問われると、田中社長は「UQのモバイルWiMAXは1000億円の設備投資で全国エリアの60%程度をカバーしている。1兆円以上投資した3Gネットワークに比べ、LTEの設備投資も全体では大した規模ではない」と説明した。

 グローバル展開については、テレハウスブランドで法人向けに展開している事業に加えて、アジアを中心にコンシューマ分野にも広げる。こちらはM&Aで現地企業を買収するアプローチを取る。「これまでもバングラディッシュのインターネット接続事業者、ブラックネットに出資した(関連記事)。バングラディッシュのような、これから伸びる国に初期段階から投資したい。さらに日本特有のクールな文化を思い切って外に出していきたい」(田中社長)とした。