写真1●ICTタスクフォースの事業者ヒアリングの様子
写真1●ICTタスクフォースの事業者ヒアリングの様子
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 総務省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」(ICTタスクフォース)は2010年4月20日、「過去の競争政策のレビュー部会」「電気通信市場の環境変化への対応検討部会」の合同会合として、NTTやKDDI、ソフトバンクなど関係事業者へのヒアリングを実施した(写真1)。事業者へのヒアリングは2009年12月に続き2回目(関連記事)。今回は、原口一博総務大臣が提唱した2015年までに全家庭にブロードバンドを普及させる「光の道」構想の実現に向けたヒアリングという位置付けである(関連記事)。

 事業者の入れ替え制によって、NTT、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセス、テレコムサービス協会、ジュピターテレコム、ケイ・オプティコムの7団体へのヒアリングが行われた。ここでは光の道実現に向けて、KDDIやソフトバンク、イー・アクセスなどから挙がった「NTTのアクセス部門を資本分離すべき」「アクセス部門を構造分離すべき」という意見と、アクセス分離に反対するNTTやケイ・オプティコム、ジュピターテレコムの主張が対立した。

「光アクセスは1400円で提供可能、NTTは構造分離すべき」と孫社長

 「光の道」実現に向けて、NTTのアクセス部門の分離を主張したのは、KDDI、ソフトバンク、イー・アクセス、テレコムサービス協会の4団体。

写真2●ソフトバンクの孫正義社長
写真2●ソフトバンクの孫正義社長
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 ソフトバンクの孫正義社長(写真2)は、「光の道を全面的に支持。光アクセスは税金ゼロで、メタルアクセスと同じ月額1400円で提供できる」とぶち上げた。

 孫社長の説明はこうだ。メタルアクセスを全廃し、同時に光アクセスを敷設することで現在年間3900億円かかっているメタルの保守費を削減。10年で3.9兆円かかるメタルの維持費は光アクセスでは2.5兆円で済むとする。さらに現在個別に行っている敷設工事を一括工事とすることで、1件当たり12万円かかっている導入費用を3万円に圧縮可能とした。月額1400円の根拠は、現在光アクセスが8本まとめてでないと借りられない設計で月額4600円程度の回線料だが、加入者が増えることで8本すべてが利用される。これによってコストは1/8になり、少なくとも1400円になるという計算だ。NTTのアクセス部門の構造分離を求めるのは、「構造的に分社化しないと、競合他社と公平なサービス競争ができないから」(孫社長)という理由である。

写真3●KDDIの小野寺正社長兼会長
写真3●KDDIの小野寺正社長兼会長
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 KDDIの小野寺正社長兼会長(写真3)も「光の道実現に向けては、一層の競争促進により民間主導で進めるべき。現在は公正競争上、アクセス網と一体化して提供するNGNの問題や、NTT西日本による競争事業者の接続情報の不正利用など、NTTのボトルネック設備に起因する問題がある。これを解消するためには、NTT東西のアクセス部門の完全資本分離が有効」とした。

 ただしNTT東西のアクセス部門を分離したとしても、NTT東西の利用部門とNTTコミュニケーションズを合算した固定系の売上高シェアは75.1%になり、競争事業者を大きく上回るという。そこで「EUなどで導入されている統合的な企業の支配力(SMP)を認定するか、NTT持ち株会社を廃止し市場支配力そのものをなくす措置が必要」(小野寺社長)と続けた。

 イー・アクセスの千本倖生会長も、光の道実現に向けてNTTのアクセス部門の構造分離を訴える。「NTT西日本の不正情報流用の件でも分かるように、機能分離では不十分。NTTのアクセス部門を構造分離し、“Japan Access”という新インフラ会社を作ることで、公正競争の確保やデジタル・デバイドに対するユニバーサル・サービスの義務を課しやすくなる」(千本会長)。