Android Developers Forum in Tokyoの会場
Android Developers Forum in Tokyoの会場
[画像のクリックで拡大表示]

 2010年4月17日、東京の秋葉原で、Androidアプリケーション開発者を応援するイベント「Android Developers Forum in Tokyo」が開催された。NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長 山下哲也氏や日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏、慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 古川享氏による講演やパネルディスカッション、開発者によるライトニングトークス、開発上の悩みに対し直接アドバイスを行う開発クリニックなどが行われ、会場は開発者の熱気にあふれた。

 Android Developers Forum in Tokyoは主催 日経BP社 ITpro、Android Application Award事務局、日経BPセミナー事業センター、特別協賛 NTTドコモ、特別協力 ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ、日本Androidの会により開催された開発者向けイベント。約500人の参加申し込みがあり、抽選で約150人が参加した。

 同イベントはUstream.tvでインターネット中継を行ったほか、Twitterでも実況。Twitterのつぶやきで寄せられた質問に講演者が回答するなど、インターネットでの双方向コミュニケーションを活用したものとなった。Ustream.tvでの中継は録画されており、Ustream.tvのADFspringチャネルで視聴できる。また当日のTwitter上でのAndroid Developers Forum in Tokyoに関するつぶやきは、Togetter上で一覧できる。

ドコモから開発者への期待

NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長 山下哲也氏
NTTドコモ スマートフォン事業推進室 アプリケーション企画 担当部長 山下哲也氏
[画像のクリックで拡大表示]

 NTTドコモの山下担当部長は「Xperiaおよびドコモマーケットの紹介と開発者への期待」と題して講演。山下氏は、4月1日に発売したソニー・エリクソン製のAndroid搭載機「Xperia」が予想を上回る売れ行きのため品薄になっていることをわび、増産に努めていると説明した。また、ドコモが開設したドコモマーケットはアプリなどを紹介する「ガイドブック」であると位置付けを紹介。最後にアプリケーション開発者への期待として「サービスのアプリ化」、「オープンな相互連携」、「デザイン」の3点を挙げた。

日本Androidの会は秋にも会員1万人へ

日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏
日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏
[画像のクリックで拡大表示]

 日本Androidの会の丸山会長は同会の活動や現状について講演した。同会の会員は現在、約7500人を超えるなど急増しており、秋には1万人を超える見込みという。地方支部としては、北海道から沖縄まで全国に15支部を設立した。女子部、デ部(デベロッパー倶楽部)を結成するなどの新しい動きもあり、今年は学生部を立ち上げる予定とした。

 Androidの認知を高めるという目的についてはほぼ達成されたとの考えから、今後はAndroid上でのビジネスの活性化に力を入れたいとの考えを示した。

「新しい機器で新しいサービス」、慶應大学 古川氏

慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 古川享氏
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授 古川享氏
[画像のクリックで拡大表示]

 慶應義塾大学大学院 古川教授の演題は「Androidプラットフォームへの期待」。古川氏は昨年、日本初のAndroidスマートフォン「HT-03A」が発表された際に授業で紹介するなど、当初からAndroidに注目していたという。古川氏は手にしたAndroid搭載電子書籍端末「nook」(関連記事)を例にとり、書籍を友人に貸して薦めるなど新しい機器の上で新しいサービスモデルが生まれていると指摘。Androidは日本の得意とする様々な組み込み機器に搭載され、新しいサービスが花開くと語った。

5分間に凝縮し思いを語るライトニングトークス

トリワークス 中谷正史氏
トリワークス 中谷正史氏
[画像のクリックで拡大表示]

 ライトニングトークスでは、公募に応募した発表者が5分間でそれぞれのテーマについて語った。発表者は日本Androidの会 女子部長の矢野りん氏、トリワークスの中谷正史氏、EMPRESS SOFTWARE JAPANのデイビッド・チャン氏、Waaotn&Companyのリ・ドンヨル氏、タオソフトウェア 代表取締役の谷口岳氏の5人。日本Androidの会の矢野氏はAndroid上でのFlashについての期待を表明。Androidアプリケーション情報サイト「アンドロイダー」を運営するトリワークスの中谷氏は、掲載しているAndroidアプリケーション約1万本のうち約9000本がXperiaで動作するものの、1000本に何らかの不具合があったことを紹介。解像度など、ハードウエアに依存しない設計をと呼びかけた。

Twitterからの質問をパネルで議論

パネル・ディスカッション
パネル・ディスカッション
[画像のクリックで拡大表示]

 パネルディスカッションでは、講演を行った日本Androidの会の丸山氏、慶應義塾大学大学院の古川氏、NTTドコモの山下氏に、ユビキタスエンターテインメント(UEI) 代表取締役社長の清水亮氏が加わり、Androidでのビジネスの可能性などについて議論を交わした。また、会場やTwitterからの質問に答えた。

 「iモードブラウザアプリを提供する予定は?」というTwitterからの質問に、NTTドコモの山下氏は「ハードキーがない端末で既存のiモードサイトを見せることがお客さんにとって幸せなのか。エミュレータでやるのは、時期限定で実施するのはありかと思うが、最終解ではないかと思う」と回答した。

 「Androidのようなオープンなプラットフォームと、アップルのような独自プラットフォームが勝つのか?」という質問もあった。慶應義塾大学大学院の古川氏は「どちらのプラットフォームが勝つかという視点ではなく、ユーザーとしてはどちらの恩恵も受ける、開発者もどちらでも動くようにターゲットを広げることがとるべき道」と指摘した。日本Androidの会 丸山氏は「オープンな最大のプラットフォームはインターネット。iPadやiPhone、Android、なんでもつなげる。それがこれからのビジネスのモデルになる」と表現した。

 UEI 清水氏は「現在起きているのは、ケータイが賢くなりスマートフォンになるという動きと、パソコンがスリムになりスマートブックになるという動き。スマートには『賢い』と『やせている』という2つの意味があり、この2つのスマート化の流れが起きている」と指摘した。

プロジェクトとデザインのキモを解説

テックファーム プロフェッショナルサービス事業部 ITプロモーション部部長 矢吹通康氏
テックファーム プロフェッショナルサービス事業部 ITプロモーション部部長 矢吹通康氏
[画像のクリックで拡大表示]
ランディード 森氏
ランディード 森俊光氏
[画像のクリックで拡大表示]

 最後のセッションは「開発ポイント解説」と題し、開発のノウハウを講師が解説した。HT-03Aに標準搭載されたアプリケーション「ポケット羅針盤」やVJ(ビデオ・ジョッキー)アプリケーション「PICT RHYTHM」の開発責任者を務めるテックファーム プロフェッショナルサービス事業部 ITプロモーション部部長 矢吹通康氏は「プロジェクト・チームの意識のベクトルを合わせるには『感動ポイント』を作るべき」と指摘。「感動ポイント」を作るためのツールの一例として、同社が実際に使用した「画面実物大の紙」を紹介し、来場者に配布した。紙の上に実際にペンで書いてみることで、チームの意識を形にして、方向を確認することができるという。

 Android専業メーカーであるランディードの森俊光氏は、デザインについて講演。「デザインは調整行為であり、美大を出ていなくてもできる」と指摘。そのためには「市場を深く観察し、ユーザーを理解し、徹底的に使ってみて、クオリティー管理を徹底、そして妥協しない」ことが必要だと語った。

 NTTドコモの山下氏はドコモマーケットについて改めて説明した。ドコモマーケットは法人からのコンテンツ掲載のみを受け付けており、現在のところ個人が開発したアプリケーションの掲載を受け付けていない。その理由を、「ユーザーからの問い合わせが大量に個人開発者に殺到することのないよう、支援体制を整えてから個人を受け入れたい」(山下氏)と説明した。 そのために、「受け付け環境を急いで整備中」(山下氏)だという。

 Android Application Award 2010 Springの事務局は、作品の提出方法についての解説を行った。またよく寄せられる質問への回答として「すでにAndroid Marketで公開したアプリケーションも応募可能」、「サーバーと連携するアプリケーションも提出可能、ただし事務局ではサーバーを用意できない」と説明した。会場からは「作品とともに画面キャプチャは提出できるのか」という質問が寄せられ、事務局からは「画面キャプチャは提出対象外とするが、すべてのアプリケーションを必ず起動して審査する」という回答があった。

悩みに答える「開発クリニック」

開発クリニック
開発クリニック
[画像のクリックで拡大表示]

 また開発ポイント解説と並行して「開発クリニック」が行われた。開発クリニックは、Androidアプリケーションの開発にあたってぶつかった問題に対し、経験豊富な開発者が直接アドバイスする企画。タオソフトウェアの谷口氏、テックファーム プロフェッショナルサービス事業部 ユビキタスソリューション部 パイオニアニューテクノロジーズグループの山田雅人氏、アックス 開発本部 第二開発部の渡邊昌之氏の3人が、クリニックの受講を希望した来場者5人の悩みに答えた。

■変更履歴
第8段落で「ワートエンカンパニー」としていましたが,表記を「Waaotn&Company」に変更します。本文は修正済みです。 [2010/04/21 20:53]