写真●富士通の間塚道義会長
写真●富士通の間塚道義会長
[画像のクリックで拡大表示]

 富士通は2010年4月14日に記者会見を開き、元社長の野副州旦氏が辞任した経緯や見解について説明した。間塚道義会長(写真)は野副氏が辞任した理由について、「リスク感覚が欠如し、当社の社長としての適格性に欠けていた」と述べた。

 間塚会長は、野副氏が辞任に至った経緯を説明した。それによれば、野副氏は富士通子会社のニフティをIT企業に売却するプロジェクトに、あるファンドを関与させることを考えていたという。このファンドについて、複数の金融機関から「反社会的勢力との関係が疑われる」などの情報が寄せられたことから、富士通はこのファンドと取引関係を持つことはふさわしくないと判断。秋草直之取締役相談役が野副氏に注意したところ、野副氏もファンドについて「怪しげだ」と認めたうえで、このプロジェクトから外すと述べたという。

 その後、富士通が調査したところ、野副氏は同ファンドの日本における代表者と連絡を取り続けており、ニフティの売却案件の会議にもこの人物が参加していることが判明した。これを受け、2009年9月に間塚会長と秋草取締役相談役、大浦溥取締役が協議し、野副氏は代表取締役としては不適格だと判断。9月25日の取締役会開催前に、間塚会長らが野副氏に事情聴取を行ったところ、その場で野副氏がファンド代表者との付き合いを継続していることを認めたために、辞任を要求したという。

 間塚会長は、「万が一、風評・評価が事実であった場合に生じるリスクが極めて大きいということであれば、個人的に信頼する人物であっても、代表取締役社長という立場では、関係を自粛し当社の事業に関与させないという判断が必要だった」と話した。

 富士通は、野副氏が取締役としての地位保全を求める仮処分を取り下げたこと(関連記事)に対して、「結審後の取り下げは誠に遺憾」とコメントした。野副氏が外部調査委員会の設置を求めていることに対して、間塚会長は「裁判所は究極の外部調査委員会。外部調査委員会の判断が必要ならば、お互いの言い分や証拠を出し合った裁判所の判断を仰ぐべき」と述べた。

 野副氏が間塚会長と秋草取締役に対して、ニフティ売却で得られるはずだった約50億円の損害を与えたとして株主代表訴訟を前提とする提訴請求を送付したことについても、「機関決定したことではなく、ニフティの売却が決定間近という認識はなかった」としている。