富士通の前社長である野副州旦氏が辞任取り消しを要求している問題で、野副氏の代理人の弁護士が2010年3月8日、日経コンピュータの取材に応じた。代理人は、今回の辞任取り消し要求の目的は「野副氏の名誉を回復するため」とした上で、解職理由がないにもかかわらず辞任を迫られたなどと主張。富士通が3月6日に発表した辞任理由の修正内容に対して反論した(関連記事1関連記事2)。

 野副氏の代理人は、2月26日付で「取締役の辞任取り消しと野副氏本人に告知弁明の機会を与えるための臨時取締役会を開催するように要求した」という。富士通の代理人を通じ、「短期間に臨時取締役会の日程を調整できるものではない」と拒否する回答があったが、実際には3月6日に臨時取締役会が開催され、野副氏の相談役解任を決議した。野副氏の代理人は、「富士通の代理人の返事は間違っていたことになる」とし、「野副氏をなぜ臨時取締役会に呼ばないのか」と疑問を呈する。

 野副氏の代理人は、富士通が発表した辞任理由修正を説明する「一部報道について」の内容についても反論する。富士通は、野副氏が推進していたプロジェクトの一部に関与していた、野副氏と親交の深い人物が代表取締役を務める企業に「好ましくない風評」があったと説明。同社は調査の結果、「取引等の関係を持つことはふさわしくない」として、取締役と監査役が野副氏に注意して、野副氏がこの企業をプロジェクトから外すと明言したと説明している。

 これに対して、野副氏の代理人は、「野副氏が注意を受けたことも、明言した事実もない」と反論。「調査結果自体を、(野副氏を含めて)誰も見たことはない」と、富士通の説明が事実に反すると主張している。野副氏が推進していたプロジェクトとは、富士通の子会社とあるIT企業との統合プロジェクトである。

 「9月25日朝の取締役会前に、野副氏は間塚道義代表取締役会長兼社長や秋草直之取締役相談役らと面談。野副氏は、反社会的組織と関係がある人物と企業のトップがかかわりがあれば上場廃止になるために辞任するように迫られ、受諾した」と、野副氏の代理人は説明する。「野副氏は面談後に私物を没収され、取締役会に出席することなく、東京都内のホテルに連れて行かれた」(同代理人)という。

 野副氏の代理人は、野副氏と親交のあった人物が、反社会的勢力とは無関係であり、企業グループの「好ましくない風評」についても、立証されていないと指摘。具体的に解職の理由がないにもかかわらず、辞任を迫られたと主張する。

 富士通が「野副氏自身が体調を崩していた事実もあったことから、野副氏本人の合意の上、辞任理由を病気として発表した」と発表したことについても、野副氏の代理人は事実に反すると説明。「当時はせいぜい肩凝りの治療をしていた程度」とし、病気を理由にして発表することも野副氏には知らされていなかったという。

 野副氏側の反論に対して、富士通は「3月6日に発表した内容に誤りはない」としており、双方の主張は対立している。

 この問題について、東京証券取引所が調査を開始した。東証は3月8日、富士通に対して、辞任理由の修正に至った経緯などを説明するように求めている。