富士通は2010年3月6日、前社長である野副州旦氏が社長を辞任した理由の修正と、野副氏の相談役解任を発表した。野副氏が辞任取り消しを要求している問題への対応が狙いとみられる(関連記事)。

 野副氏が辞任に至った経緯として、富士通は「好ましくない風評」がある企業との関係を挙げている。同社が発表した報道資料「一部報道について」によると、この企業は野副氏と親交のある人物が代表取締役を務める。そして、同氏が推進するプロジェクトの一部について、この企業がかかわっていることが2009年2月ごろに判明した。富士通は、同社の理念・行動規範から、この企業と取引関係を持つのは適切ではないと判断。取締役と監査役からの指摘を受け、この企業をプロジェクトから外すと野副氏は明言したという。

 ところがその後の調査で、この企業と野副氏の関係が継続していたことが分かった。それを受け、2009年9月25日の定例取締役会の前に、間塚道義代表取締役会長兼社長らが野副氏と面談し、この企業との関係が継続しているのであれば代表取締役を解職する、ただし辞任の意向があれば受け入れると、野副氏に対して伝えた。野副氏は、親交のある代表取締役を、企業グループから切り離した個人としてプロジェクトに関与させていたと説明したという。最終的に、「野副氏も、当社代表取締役社長という立場からは、そのような認識は通用しないことを理解し、辞任を選択された」と富士通は説明する。

 富士通は、9月25日の会見で野副氏の辞任理由を病気と発表したことについて、「野副氏自身が体調を崩していた事実もあり、野副氏本人と合意の上だった」と説明。辞任の引き金となった野副氏と企業との関係を発表しなかったのは、「富士通以外の企業に風評被害が及ぶのを避けるためだった」と説明している。

 また、同時に発表した野副氏の相談役解任について、富士通は「経営の一端を担う役職を任せていたが、辞任取り消し要求によって当社との信頼関係が失われたため」(広報)とその理由を説明している。