開発を継続して既存顧客の不安を解消し、落ち込みの激しかったサン製品の販売を回復させる--。現地時間の2010年1月27日に米国で開かれたオラクルによるサン・マイクロシステムズの統合戦略の発表イベントを通じて、オラクルのこうした方針が読み取れる。

 冒頭のオラクルのチャールズ・フィリップス社長の講演から「コンプリート、オープン、インテグレート」という三つのキーワードと、サン製品の継続というメッセージは明確に伝わってきた(関連記事)。この方針は、ハードやソフト、OS・仮想化技術、サポートの各部門の戦略発表でさらに明確になった。

SPARCプロセサの新製品出荷時期を公開

 ハードウエアでは、SPARCプロセサの新製品がいつ登場するかについて明らかにした。競争力が低下してきたSPARCプロセサの将来は、多くのサンの顧客が強い関心を持つ分野である。

 オラクルは、これまでサンが開発していたUltraSPARC T1、T2に続くプロセサ、T3を2010年中に出荷すると発表した。富士通が開発するSPARC64プロセサについても、UltraSPARCと同様に処理速度の改善を続ける意向を示した。

 ストレージについては、「現在、ハードウエアに関連する技術で最もエキサイティングなもの」としてフラッシュ技術を紹介し、同技術を搭載するストレージとソフトを組み合わせることで、アプリケーションの処理速度が向上すると説明。さらに独自のファイルシステムを採用するサンのストレージは、他社製品よりもフラッシュ技術との相性がいいと力説した。

 このほかサンが提供してきた通信事業者向けのサーバーについて製品名を挙げて紹介し、信頼性の高い製品を作る技術力をアピールしている。ただし、2009年9月に発表した「Sun Oracle Database Machine」のような具体的な製品の発表はなかった。

オープンソースは投資継続を強調

 両社に重複した製品が多いミドルウエアの領域では、継続する製品と統合する製品をそれぞれ説明した。アプリケーションサーバーについては、サンのGlassFishとオラクルのWebLogicの双方の開発を続け、将来的には両製品で技術を共有する。MDM(マスターデータマネジメント)製品では両社の製品の開発を継続し、ID管理製品はサン製品の機能をオラクルのIdentity Managerに統合していく。

 運用管理ソフトの分野ではオラクルのEnterprise Managerがアプリケーションとミドルウエア、データベースを、サンのOps CenterがOSやファームウエア、ハードウエアを管理する能力に優れると説明。両製品の機能を活用すれば、一つのソフトでシステムのほとんどの領域を管理できるようになるとした。オラクルは、今後6カ月以内に2製品が相互に連携できるようにしその後、両製品を統合する計画だ。

 開発言語のJavaについては開発者コミュニティへの支援を約束。Javaの開発環境であるNetBeans、Oracle JDeveloper、Eclipseについては双方とも継続して開発する。

 主要なオープンソースソフトは、基本的に投資を継続する。特にネット関連分野で人気が高く採用実績が多いものの、オラクルの主力製品と競合する可能性のあるデータベースソフトであるMySQLについては、今後の投資やサポートの継続を約束した。さらにオープンソースの代表的なオフィスソフトであるOpenOfficeなどについても、投資を続ける。

 仮想化の領域では、オラクルのサーバー仮想化ソフトに、サンのストレージ仮想化技術やシンクライアントソフトなどを加え「デスクトップからデータセンターまで、アプリケーションからディスクまで」を対象に広げる方針だ。

 またハードとソフトの戦略を説明した後、オラクルはクラウドの戦略についても言及した。2社の製品を組み合わせることでPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)やIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の基盤を構築するための製品がすべてそろうと説明した。

サポートはオラクルに一本化

 一方で、製品でない業務に関するプロセスについては迅速に統合を進める方針のようだ。製品のサポートについては、オラクルのMy Oracle Supportに一本化する。

 営業体制も同様である。大規模な顧客は直販部隊が、中堅以下の企業についてはパートナー企業が主に担当し、両社の製品を販売していく。これに伴い、オラクルは営業や技術などのスタッフを2000人採用する。

 これまで数四半期にわたって赤字を続けてきたサンの製品をそのままで提供し続けていると、顧客の不安は解消できるかもしれないが、買収したオラクルの収益に悪影響が生じる可能性がある。この点については、サンのサプライチェーンや各種のオペレーションをオラクルに統合することで、業務全体が効率化し、収益の改善が可能だとしている。

 オラクルのジェフ・エブスタインCFO(最高財務責任者)は「ピープルソフトなどこれまで買収したすべての企業が、買収後に収益が上がった」とし、サンの収益の改善に自信を見せた。

 同社のラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)も自らのセッションで「2010年2月から利益が出る」と明言している(関連記事)。