東京証券取引所が有価証券上場規程を一部改訂、2009年12月30日に施行した。上場企業に対して、IFRS(国際会計基準)対応に向けた体制整備を促す。日本では2010年3月31日以降に終了する事業年度からIFRSの任意適用が可能になり、2015年にもアドプション(強制適用)が始まるとみられる。IFRS対応の混乱を避けるために、早期の体制整備を促進するのが狙いだ。

 IFRSに関しては、有価証券上場規程に「第451条」と「第409条の2」を追加した。第451条では、上場企業に対して「会計基準等の内容を適切に把握」したり、「会計基準等の変更等について的確に対応」できる体制の整備を求める。会計基準等とはIFRSなどを指す。この項目を企業行動規範の「望まれる事項」として規定している。

 第451条では体制整備の方策として、「会計基準の変更等についての意見発信および普及・コミュニケーションを行う組織・団体への加入」「企業基準設定主体等の行う研修への参加」を挙げる。東証が2009年12月30日に公表した「上場制度整備の実行計画2009(速やかに実施する事項)の進捗状況」では、組織・団体として「例えば、財務会計基準機構」としている。財務会計基準機構は企業の会計基準などを決定している企業会計基準委員会(ASBJ)を傘下に置く。

 第409条の2は、この財務会計基準機構に関するものだ。上場企業は「事業年度経過後3か月以内に、当該事業年度の末日における財務会計基準機構への加入状況」を開示する必要がある。加入していない場合は、「翌事業年度以降における加入に関する考え方」を開示すべきとしている。2010年3月1日以降に終了する事業年度の経過後に実施する開示から適用になる。

 事前に募集したパブリックコメントでは「財務会計基準機構への加入は上場企業の義務とすべき」との声が寄せられた。これに対し、東証は「財務会計基準機構への加入実態を踏まえつつ、引き続き検討」するとの考えを示した。今回の改訂は加入を強制しているわけではないが、強く要請していると受け取れる。財務会計基準機構の年会費は、2010年度以降(2010年4月1日以降)は1口につき、法人会員が30万円、個人会員が5万円である。

 東証は規程改定に先立ち、2009年9月29日に上場制度整備懇談会ディスクロージャー部会を設置した。ここでIFRSの任意適用を踏まえた上場制度上の対応について検討し、2010年3月までに検討課題を整理するとしている。こうした活動の成果を、今後規程に反映していくとみられる。

 なお今回の規程改定で、東証はJ-SOX(日本版SOX法)に関する項目も追加した(第402条(1)am)。上場企業は内部統制に「重要な欠陥」がある、あるいは内部統制の評価結果を表明できないという旨を記載する内部統制報告書の提出を決定した場合、ただちにその内容を開示する必要がある。2010年3月1日以降に終了する事業年度にかかわる内部統制報告書から適用になる。