終了後に記者会見を行ったウェルネット 代表取締役 尾藤昌道氏(左)とケンコーコム 代表取締役 後藤玄利氏(右)
終了後に記者会見を行ったウェルネット 代表取締役 尾藤昌道氏(左)とケンコーコム 代表取締役 後藤玄利氏(右)
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 東京地方裁判所で2009年9月1日,ケンコーコムとウェルネットによる,厚生労働省の医薬品通信販売規制に対する行政訴訟の第2回口頭弁論が行われた。閉廷後の記者会見でケンコーコム 代表取締役 後藤玄利氏は「日本薬剤師会役員が運営する薬局が省令を順守せず,郵便による販売を行っている」との調査結果を公開した。

 厚生労働省が2009年6月1日に施行した「薬事法の一部を改正する法律」の省令により,安全確保のための対面販売の原則を理由に,第1類医薬品および第2類医薬品の通信販売が,へき地と継続使用を除いて禁止された。医薬品のインターネット販売を行っているケンコーコムとウェルネットはこの省令が違憲であり無効であることの確認を求め,国を相手取り提訴している。

 2009年7月14日に行われた第1回の口頭弁論で,ケンコーコムらは国に対し「一部の会社が特例販売業許可を利用してへき地から全国へ向けて医薬品の通信販売を行っている事態を厚労省は把握しているのか」などの質問への回答を要求した(関連記事)。これらの質問に対し,国は8月10日に回答書を提出,ケンコーコムらによれば「特例販売業の許可を取得している会社が許可を受けた範囲を超えて郵便等販売のように広く医薬品販売を行う場合は,特例販売業の許可の趣旨に反するので,都道府県の判断により行政指導また必要に応じて改善命令もしくは業務停止または許可の取り消しの対象となる」などの回答があったという。

 第2回口頭弁論までにケンコーコムと国からそれぞれ準備書面が提出された。国側からは「他により制限的ではない規制手段が存在したとしても,明白に不合理な制限でなければ即座に違憲とは言えない」,「立法に際して国会,委員会などで議論は尽くされている」などの趣旨の反論が提出された模様だ。ケンコーコム側は準備書面で「店頭では第1種医薬品でも購入者が情報提供を不要とすれば情報提供する必要がないのに対し,通信販売では購入者が情報提供を要求しなくても販売できないなど矛盾した不合理な省令で,いかなる解釈・立場からも違憲」,「厚生省自身が対面の原則の定義すら明確にできていない」と主張している。

 ケンコーコムとウェルネットは弁論後に記者会見を行い「裁判における情報収集の一環として,法令を順守した販売が行われているか調査したところ,日本薬剤師会の役員が運営する薬局が引き続き郵便などによる販売を行っている」という調査結果を報道陣に配布した。

 ケンコーコムは実際に一般用医薬品を薬局で購入し調査した。日本薬剤師会幹部が運営する広島県のある漢方薬局では,最初に代理人が対面で漢方薬を購入した際「次回以降は郵送で購入ができる」との説明があり,その言葉通り2回目は電話で代理人が注文したところ,郵送で初回と同じ漢方薬を購入できたという。また神奈川県の日本薬剤師会幹部が運営する漢方薬局でも,最初に代理人が購入すると「代理人でもよいので初回に対面すれば次回以降は郵送で購入できる」という説明があり,実際に2回目は電話で代理人が注文し,初回と同じ漢方薬を郵送で購入できたという。調査結果はケンコーコムのホームページでも公開している(ケンコーコムによる調査結果)。

 後藤氏は「省令施行後の新規顧客に対する郵便での販売は明らかに違法。ケンコーコムでは悪法といえども法であるとして薬事法を順守,1カ月あたり約2500件の注文をお断りしており,今年度の売上予測を5億円下方修正した。安全性を強調して規制導入を積極的に推進した日本薬剤師会の会員が法令を順守していないことは,きわめて遺憾」と語った。ただし「省令はお客様の安全にはまったく意味をなさないものであり,薬剤師が自身の知識に基づいて安全に販売できると判断し行っているという点については賛同する」と述べた。

 ウェルネットも改正省令を理由に販売を断った注文が,2009年6月は約100万円,7月は約25万円,8月は約35万円になっているという。ウェルネット 代表取締役 尾藤昌道氏が「販売できなかったのは,明らかに事情を知らない新規顧客。新規顧客を獲得できないのでは企業の成長の機会はない」と話す。

 医薬品のネット販売規制について,民主党は楽天の三木谷浩史社長らによる公開質問状への回答として「重大な問題を抱えていると考えており,150万人の反対署名が寄せられていることなども踏まえ,見直しを検討する」と表明している(関連記事:民主党、楽天などの質問状に回答、「大衆薬の通販規制は見直し検討」)。

 次回の口頭弁論は2009年10月20日に行われる。