イー・アクセスは2009年5月14日,2009年3月期(2008年4月~2009年3月)の通期連結決算を発表した。売上高は前年同期比39.8%増の944億6700万円,営業利益は同135.7%増の167億1200万円の増収増益となった。「アッカ・ネットワークスを連結子会社化したことによるADSL事業のシェア拡大や,イー・モバイルが2008年後半から開始したネットブックとデータ通信カードのセット販売による契約者数拡大などが増収増益に貢献した」(深田浩仁代表取締役社長,写真1)。
2007年6月1日から持分法適用関連会社へ異動した関連会社のイー・モバイル(関連記事)は,連結決算上は投資損益として反映される。2009年3月期のイー・モバイル持分適用投資損失は172.8億円。その分を差し引いたイー・アクセスの当期純損失は98.5億円となっている。
2010年3月期の見通しは,売上高が830億円,営業利益が168億円の減収増益を見込む。減収予想は,音声機能付き端末の出荷台数の減少や,データ通信カードの価格下落を見込んだもの。一方,当期純利益は,イー・モバイルの持分法投資損失が縮小することによって,3年振りの黒字を予想している。
イー・モバイルは今夏に最大21Mビット/秒のHSPA+を導入
イー・モバイル単体の2009年3月期の実績は,売上高が614億5000万円と前期の145億円から大幅な増収となった。営業損益は368億8000万円の赤字と,前期の損失額382億1000万円から若干改善した。同社のエリック・ガン代表取締役社長兼COO(写真2)は,「営業損失や純損失は今年が底。来期以降は大きく改善する」と説明。2010年3月期の予想としては,売上高が1300億円,営業損益が30億円の赤字,純損益が116億円の赤字,EBITDA(利子,税金,減価償却費控除前利益)が200億円の黒字と,一部黒字化できる見込みを示した。
設備投資額は,2009年3月期は397億円だったという。前期の982.1億円をピークとし,来期は530億円程度にとどまる見込みという。2010年以降にはLTE(long term evolution)などの次世代携帯電話システムへの投資が控えているものの,「3.9G向けの新周波数帯として1.7GHz帯を申請したが,この周波数帯を割り当ててもらえれば既存の設備を生かせるため,設備投資額をかなり抑えられる。これまでの投資額から大きな変動は起こらないだろう」(ガン社長兼COO)との考えを示した。
イー・モバイルの今期の加入者純増数は約100万。来期も,同様の純増数100万を目指す。ガン社長兼COOは,「今年はモバイル・ブロードバンド市場の競争が激化するだろう。イー・モバイルはデータ通信カードに力を入れる。今夏には現在よりも3倍高速化した最大21Mビット/秒のHSPA+(HSPA Evolution)を導入する」と説明。UQコミュニケーションズのモバイルWiMAXが本サービスを開始する夏に向けて,サービス内容を強化する考えを見せた。