KDDIの小野寺正社長兼会長は2009年4月23日の決算説明会にて,同社が次世代携帯電話システムとして採用を表明しているLTE(long term evolution)の前に,現行のCDMA2000 1x EV-DO Rev.Aをマルチキャリア化したシステムの導入を検討していることを明らかにした。

 小野寺社長はこれまで本誌のインタビューなどで,現行EV-DO Rev.Aを改良した,下り最大73.5Mビット/秒,上り最大27Mビット/秒のEV-DO Rev.Bを採用しないことを表明していた(関連記事)。だがそうなると,同社がLTEを導入する2012年までは,下り最大3.1Mビット/秒,上り最大1.8Mビット/秒の現行Rev.Aのままとなり,HSPA技術などで段階的に速度を向上している他社と比べて,システム面で見劣りする。

 小野寺社長は,「Rev.Aの帯域を2波,3波束ねてマルチキャリア化することで,速度を向上できる。Rev.Bの仕組みの一部を適用し,基地局をソフトウエア・アップグレードするだけで可能になる。データ・トラフィックの伸張が見えたとしても,これで競争力を維持できる」と説明した。マルチキャリア化による最大速度について具体的には明らかにしなかったが,理論的には帯域が2倍になれば速度は2倍になる。HSPA技術でも,帯域を束ねて速度を2倍にするDC-HSDPAといった技術が登場している(関連記事)。

 Rev.Aのマルチキャリア化について,現段階で3GPP2で標準化された技術ではないという。だが小野寺社長は,「KDDI以外にも導入したいという通信事業者は世界にいる。自ずと標準技術になるのではないか」との見通しを語った。

 マルチキャリア化の導入時期については現在検討中。基地局側はソフトウエア・アップグレードで対応できるが,端末側は新しい対応端末が必要になるという。小野寺社長は,「LTEは2012年から新800MHz帯を中心に導入する。ただこれまでのように急速にネットワークの需要が伸びる時代ではなく,LTEへの切り替えは徐々に進める。マルチキャリアRev.Aも当分残す」と,同社の次世代システムへの移行計画を改めて説明した。