図1●対応エリアでWi2のポータルにログオンすると位置に応じたコンテンツを表示する
図1●対応エリアでWi2のポータルにログオンすると位置に応じたコンテンツを表示する
[画像のクリックで拡大表示]

 ワイヤ・アンド・ワイヤレス(Wi2)のIEEE 802.11n対応公衆無線LANサービス「Wi2 300」が2009年4月20日,東京・丸の内で始まった。早速,最大300Mビット/秒の物理速度をうたうWi2 300の実効速度を,丸ビル,新丸ビル,丸の内オアゾの3カ所で測定した。その結果,802.11n接続時の実効速度としては,おおむね10M~20Mビット/秒を記録した。瞬間最大で28.2Mビット/秒を記録するなど30Mビット/秒に迫る場面があった。

 まず簡単に,Wi2 300の特徴をまとめておこう。IEEE 802.11a/b/gを使う一般的な公衆無線LANサービスの物理速度は11M~54Mビット/秒である。Wi2 300では,MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を使い複数のアンテナ間で多重化した信号列をやりとりするIEEE 802.11nを使うことで,最大300Mビット/秒の物理速度をうたっている。802.11nによる接続だけでなく,802.11iによる高セキュリティ接続や,802.11b/gを使った接続も可能である。

 Wi2 300では,「人の動線に展開する」(日比野雅夫社長)というコンセプトに基づいて,無線LANアクセス・ポイント(AP)を展開する。今回サービスを開始した丸の内エリアでは,オープン・スペースや通路などを計100弱のAPでカバーした。丸の内エリア個別の事情として,クウジットが開発した無線LANベースの位置情報プラットフォーム「Location Amplifier」によるユーザー向けナビゲーションと,インターネット接続をサービスの中核に据える。これにより,屋内の地下1階から地上8階までユーザーが居るフロアの店舗情報を自動的に表示する。iPhoneおよびiPod TouchなどWebブラウジングが可能な無線LAN搭載機に対して,GPSでは不可能に近いきめ細かなナビゲーションを提供できるのが売りだ(図1)。

 無線LANのインフラとしては,各ビルの無線LAN APを通信事業者の網サービスを通じてデータセンターに接続。データセンターに設置した無線LANコントローラで集中制御する手堅い設計となっている。加えて美観を損ねないよう,基地局は「ユーザーの視界に露出しないように設置している」(Wi2の小松直人シニアエキスパート)とのこと。なおコンテンツは各店舗の情報を集めたポータルのものが中心だが,「ローカルにキャッシュ・サーバーなどは特に設けていない」という。

最大実効速度は丸ビル7階の25.4Mビット/秒

図2●東京・丸の内の公衆無線LANサービス「Wi2 300」の実効速度
図2●東京・丸の内の公衆無線LANサービス「Wi2 300」の実効速度
サービスエリアは丸ビル,新丸ビル,丸の内オアゾの3商業ビル。いずれも無線LANの通信方式は,2.4GHz帯/20MHz幅の802.11n,2ストリームでリンク速度は130Mビット/秒である。
[画像のクリックで拡大表示]

 実効速度の測定に当たっては,以上のような「人の動線を重視する」設計思想を踏まえて,エスカレータ側の休憩スペースを中心になるべく椅子が設置してある場所を測定地点に選んだ。測定には速度測定サイト「speed.rbbtoday.com」を使用。丸の内エリアのWi2 300の仕様に合わせて,2.4GHz帯,20MHz幅での802.11n通信による実効速度(3回測定の平均値)を測定結果と採用した。測定に使用した端末は,バッファローの802.11n対応無線LANアダプタ「WLI-UC-G300N」を装着したCore 2 Duo U7600(1.2GHz)搭載のLet'snote R7である。

 結果を見てみると,総じて10M~20Mビット/秒の実効速度が出ている(図2)。抜きんでているのは丸ビル7階と8階の貸し会議室や貸しホールがあるフロア。ネットワーク機器の設置が前提になっているフロアのためか,7階で25.4Mビット/秒の最大速度を記録した。これは3回測定の平均値だが,瞬間最大で28.2Mビット/秒を記録するなど30Mビット/秒に迫る場面があった。

 一方で,メイン・エスカレータ周辺の店舗からやや離れた吹き抜けのゾーンに休憩スペースが配置されている丸ビル2~3階,および5階では,10Mビット/秒を割り込んだ。一般的な電波設計では,吹き抜けの壁面にAPを設置するなどして,エリア・スループットを上げる。だが,丸の内エリアのWi2用APはユーザーの目に見えない場所に設置されているため,この差が出たのだろう。

図3●基本は屋内向けサービスだが,新丸ビル7階のテラスでも3Mビット/秒程度で利用可
図3●基本は屋内向けサービスだが,新丸ビル7階のテラスでも3Mビット/秒程度で利用可
[画像のクリックで拡大表示]

 なお新丸ビルには,7階の外に自由に出られるテラスに休憩スペースがあった。屋外は電波設計の想定外となるが,下り3.4M/上り3.6Mビット/秒と必要十分の実効速度が得られている(図3)。

 最大で20Mビット/秒の実効速度ならば,802.11gでも事足りるように思える。しかし他事業者の公衆無線LANサービス,各店舗の無線LAN機器,その他2.4GHz帯を利用するさまざまな電波干渉の中で,複数のユーザーからのアクセスをさばくには力不足のようだ。試しに20Mビット/秒を超えた丸ビル7階,丸の内オアゾ5階の2ポイントで11g利用時の実効速度を計測すると最大でも10Mビット/秒前後と,11nの半分程度の実効速度にとどまった。

 Wi2 300は,Wi2以外にソフトバンクテレコムのBBモバイルポイントやライブドアのlivedoor Wirelessとの間でのローミング・サービスを提供する。基本料金は月額105円,1パケット 0.0015円の従量課金で980円が上限の段階定額制。2009年7月末までに契約したユーザー向けに基本料無料などのキャンペーンを実施する(関連記事)。