写真1●動画配信サービスの統合で合意したヤフーの井上雅博代表取締役社長(左)とUSENの宇野康秀代表取締役社長(右)
写真1●動画配信サービスの統合で合意したヤフーの井上雅博代表取締役社長(左)とUSENの宇野康秀代表取締役社長(右)
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写真2●国内映像配信サービスの利用者数(月間ユニークユーザー数)。Yahoo! JAPANのサービスとGyaOを合わせた利用者数は,国内最大級となるという
写真2●国内映像配信サービスの利用者数(月間ユニークユーザー数)。Yahoo! JAPANのサービスとGyaOを合わせた利用者数は,国内最大級となるという
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 ヤフーとUSENは2009年4月7日,ヤフーが運営する「Yahoo!動画」とUSENの100%子会社のGyaOが運営する「GyaO」の二つの動画配信サービスを統合することで合意したと発表した。USENが保有するGyaO株式51%をヤフーに譲渡し,2社の共同出資会社とした上でサービスを統合する(関連記事)。

 記者会見で行われた質疑応答は,以下の通りである。なお回答したのはヤフー 代表取締役社長の井上雅博氏と,USEN 代表取締役社長の宇野康秀氏である。

――今回の事業提携の経緯を教えて欲しい。
宇野氏 ヤフーとはこれまでもグルメ関連のサービスや有料動画配信サービスなどで提携関係にあり,以前井上氏から利用者や広告主にサービスを利用しやすくするために,動画配信の規格を統一してはどうかという話があった。その話をきっかけにサービスをより強化することを考えたところ,単独で事業を進めるよりもパートナーを組んだほうがいいと思うようになった。そこで,今度はUSENからヤフーに対して,今回の事業統合について話を持ちかけた。
 もともとGyaOを始めたのは,コンテンツホルダーに対してビジネスチャンスを提供するための場づくりが目的だった。ヤフーとUSENの両社が一体となってその「場」を大きくしたほうが,関係者に与えられるメリットも大きくなる。またヤフーは,インターネットサービスの収益化に対する見識について,我々が持ち合わせないものをたくさん持っていると考えている。

――利用者から見てサービスはどう変わるのか。また,「GyaO」のブランドが付くほかのサービスはどう展開するのか。
井上氏 新プラットフォームでYahoo!動画とGyaOのどちらのブランドを残すかはまだ決めていない。ただ,GyaOのブランドは多くの利用者に支持されているので,大事にしたい。最終的には新会社の役員が選択することになる。当面はYahoo!動画とGyaOの2サービスが並存するが,次期バージョンでは両サービスを似たサービス,あるいは同じサービスとして提供し,なるべく早く統合する。開発の都合もあるが,1年くらいで結果を出せればと考えている。
宇野氏 「GyaO」のブランドが付くほかのサービスについては,USENが継続して利用者に届けていく。

――統合後のサービスは,無料サービスが中心となるのか。
井上氏 コンテンツ事業者に対する映像配信プラットフォームを提供するのが我々の仕事で,その上でどういうビジネスを行うかはコンテンツホルダーが判断すること。プラットフォーム事業者としてさまざまなビジネス形態に対応できるように,必要な仕組みについては対応してゆく。

――GyaO事業はこれまで赤字続きだった。利益が出なかった要因をどう分析しているか。
宇野氏 理由は一つではない。まず,GyaOは広告だけが収益源の事業モデルだったが,サービスが広告商品として十分な完成度に至らなかった。また,広告クライアントに商品価値を理解してもらうのにも時間がかかった。さらに違法コンテンツを掲載する動画投稿サイトの人気が高まるといった,サービス開始当初想定できなかった環境変化の中でサービス展開しなければならなかったことも要因の一つだ。ただこうした要因は,ヤフーと設立する共同出資会社では,より力を入れて解消していけるのでないかと考えている。
井上氏 ヤフーも動画配信事業単体では儲かっているとは言い難い状況だ。コストを削減して早期に事業を黒字化させたいという希望は,両社が目指す目標の一つだ。

――サーバー類などのインフラ設備は,両サービスで持っているものをそのまま使うのか。
井上氏 基本的にインフラ設備を二つ持つのは無駄だと思っている。一つにまとめ,コストを半減させる。利用するプラットフォームをどちらか一方にまとめるのではなく,両者のいいとこどりをした新しいプラットフォームを作り,将来的に現行のプラットフォームは使わなくなるという形になるだろう。

――テレビ向けに提供している映像配信サービス「GyaO NEXT」は今後どうなる。
宇野氏 GyaO NEXTは,セットトップ・ボックス(STB)を利用したテレビ向けの有料映像配信サービスで,GyaOとは別サービスだ。今後も引き続きUSENで事業展開する。ただし,ヤフー動画が検討しているテレビ向けの動画配信サービスと繋がる要素も多く,協業について改めてヤフーと相談することがあるかもしれない。

――ヤフーは動画投稿サービスの「ニコニコ動画」とも連携サービスを提供している。動画投稿サービスに対する後ろ向きな意見があったが,今後ニコニコ動画との関係に変化はあるか。
井上氏 動画投稿サービスの存在そのものがまずいと思っているわけではない。そうしたサービスは,自分で撮影したビデオを共有するのが本来の目的で,こうした使い方に問題はない。ただし,テレビ番組やDVDの映像を投稿するといった違法な使い方が普及すると,コンテンツを作る人に収益を分配できなくなり,コンテンツが作られなくなる。違法投稿については厳しく対処するべきだ。一方,きちんと権利処理した動画サイトで利用者がコンテンツを視聴する環境が育っていないことも違法投稿が後を絶たない理由の一つだ。今回の協業により,権利者がきちんとインターネットでビジネスができる場を提供することで,積極的にコンテンツが提供されるようになれば,違法に動画を投稿・視聴する理由がなくなる。そうしたいろんなプレーヤーがビジネスとして動画配信に取り組めるプラットフォームを目指したい。

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