PDA業界のパイオニアである米Palmは2009年1月の家電展示会「2009 International Consumer Electronics Show(CES)」で新型スマートフォン「Palm Pre」を華々しく発表した(関連記事:Palm,新ソフト基盤「webOS」と同基盤を搭載した携帯電話機「Palm Pre」を発表)。だが,その影響で現行製品の買い控えで先行きの不透明さが増している。2009会計年度第3四半期(2008年12月~2009年2月期)の売上高は前年同期に比べ72%減少し,9800万ドルの赤字を計上した。その上,同社は少なくとも2009年半ばのPre発売まで損失体質が変わらないとしている(関連記事:Palmの12月~2月期決算は71%減収で赤字拡大,スマートフォンの販売激減)。

 PalmのCEO兼社長であるEd Colligan氏は,「当社の新たな時代が間もなく幕を開ける。今はまだ厳しい移行期間にあるが,この状況がわれわれの掲げた戦略的な目標への飛躍に影を落とすことなどあり得ない」と述べた。

 同社の問題は,待望のPreの詳細を明らかにしていない点と,たった1つの製品発売で状況が一変するかどうか分からない点にある。同社はPreの価格に言及することを拒み,「スマートフォン市場には,米AppleとカナダResearch in Motion(RIM)の人気デバイスのすき間を埋めるオールインワン・デバイスの入る余地がある」と主張するだけだ。Preが現実の世界でどのように活躍できるかは,全く見えていない。

 現時点で同社がPre対応キャリアとして明らかにしたのは,低迷中の米Sprint Nextelただ1社である。Sprint Nextelは米国で最下位もしくは最下位近くをさまよっている携帯電話キャリアであり,Pre熱気を冷ます一因といえる(関連記事:Sprint Nextelの2008年Q4決算は14%減収,サービス加入者が130万人減少)。Palmは欧州のキャリアとも交渉中としているが,そのうちにSprint Nextel以外の米国キャリアもPreを販売するようになるだろう。

 Palmには「Preというハードウエアだけに集中しているわけではない」という言い分がある。確かに,Pre発売後は新たなモバイル機器向けソフトウエア「Palm webOS」を推進するし,webOSが将来登場する多くのデバイスの基盤となるという。もっとも,どのようなデバイスなのかは闇のなかだ。

 結局のところ,同社がPre立ち上げの大失敗後に生きながらえるかどうか判然としない。同社は余剰金を上積みするために,最近調達した資産の半分を売却する必要に迫られた。現在の手持ち現金/資産は2億1940万ドル相当に過ぎない(関連記事:Palm,約1850万株を転売へ,「Palm Pre」推進を図る)。