億万長者の投資家Carl Icahn氏は,5900万株もの米Yahoo!の株式を武器にして,同社の現職役員を退陣させてMicrosoftとの合併に賛成する役員と入れ替えるため,委任状争奪戦を仕掛けると正式表明した。同氏は2008年5月15日(米国時間),Yahoo!の役員会に書簡を送り,Microsoftとの交渉を再開するよう求めた(関連記事:投資家Icahn氏がYahoo!会長にMicrosoftとの合併を提言,委任状争奪戦へ)。

 Icahn氏はこの書簡で「私からみれば,Yahoo!役員会の不合理な行動で株主とMicrosoftの信頼が損なわれたことは明白だ」と記した。「Microsoftの提案した1株当たり33ドルという買い取り価格が,Yahoo!単体で事業を続ける場合の業績見通しより優れた選択肢であることは,一目瞭然である。Microsoftが示した金額は,19.18ドルという当時のYahoo!株価に72%のプレミアムを上乗せしており,株主にこの条件を受け入れさせなかった役員会は非良心的だ」(Icahn氏の書簡)。

 「現在の役員を解任し,Microsoftとの合併実現に向けて交渉する新たな役員会を組織するための委任状争奪戦を行うよう,多くのYahoo!株主から依頼された。個人的な見解だが,現在の役員会は合併交渉を台無しにしてしまった」(Icahn氏の書簡)。

 Icahn氏がYahoo!に突きつけた要求は単純である。直ちにMicrosoftと接触し,以前提示された1株当たり33ドル,総額475億ドルという買収条件を受け入れろ,というだけだ。要求が受け入れられなければ,同氏は10人の新役員候補を立て,現役員の入れ替えを図る。同氏によると,新役員たちはMicrosoftとの交渉を再開するという。

 また,Icahn氏は米連邦取引委員会(FTC)に対し,25億ドル相当のYahoo!株式の追加取得を許可するよう求めた。さらに,同氏はこの計画をMicrosoftに伝えたものの,反応が得られなかったらしい(関連記事:投資家の参戦で委任状争奪戦に巻き込まれそうなYahoo!)。この点は,同氏にとって問題となるはずだ。Microsoftが興味を示さないと,Yahoo!の現役員を退陣させる目的が不明確になってしまう。