米Yahoo!の役員会は米Microsoftの退却で委任状争奪戦を逃れたが,今度は億万長者の投資家Carl Icahn氏が参戦を準備中だ。同氏は「物言う株主」として知られている。同氏に近い人物からの情報によると,同氏はYahoo!の現役員を退陣に追い込んでMicrosoftとの合併交渉を再開させる計画らしい。

 Microsoftが買収提案を撤回して以降,Icahn氏はYahoo!の株式5000万株を取得し,Yahoo!役員に退陣を迫るかどうかの判断を2008年5月14日(米国時間)に下すとみられる(なお,新役員推薦の締め切り日は5月15日だ)。同氏が購入したYahoo!株の価格は,現在10億ドルを超えている。

 ただし,一つ問題がある。買収提案を取り下げたMicrosoftは,Yahoo!に対する興味をほとんど失ってしまったのだ。Microsoftは降ってわいたIcahn氏の計画に正式なコメントを出さず,CEOであるSteve Ballmer氏のYahoo!買収断念理由を記した5月3日付け書簡を挙げるにとどめた(関連記事:【解説】Yahoo!買収を断念したMicrosoftは,Googleのクラウド・コンピューティングに追いつけるのか?)。さらに,Icahn氏から最近持ちかけられた会談要求も無視したはずだ。

 Microsoftが関与しないので,Icahn氏が何を狙っているのかよく分からない。Microsoftの買収計画に消極的だったとして現在のYahoo!役員会を攻撃することは,なかなか魅力的だ。それに,Yahoo!の主要株主の多くは今でもMicrosoftとの取引を成立させたいと強く願っている。

 Yahoo!株式の6%を持つ米国の投資会社Legg Masonでポートフォリオ・マネージャを務めるBill Miller氏は「Microsoftが交渉再開を望んでいないとしたら,Yahoo!株主を代表する新役員陣の実行できることはなかなか見えてこない」とする。Legg Masonは,Microsoftへの売却支持派の株主である。しかし,Legg Masonは,買収交渉決裂の責任がYahoo!でなくMicrosoftにあったと考えている。

 Icahn氏は勝てるだろうか。結果はすぐに分かる。