写真1●NTTドコモの山田隆持代表取締役副社長
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写真2●KDDIの伊藤泰彦代表取締役執行役員副社長
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写真3●ソフトバンクモバイルの松本徹三取締役副社長
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 総務省や情報通信研究機構(NICT)などの主催による第4世代移動通信システム「IMT-Advanced」に関する国際会議「ICB3G-2008」(International Conference on Beyond 3G Mobile Communications 2008)が,2008年3月27日~28日にかけて東京都内で開催中だ。日中韓および欧米各国の専門家が多数参加し,政策や国際標準化などについて活発な意見交換がされている。

 IMT-Advancedとは,現在の第3世代移動通信システム「IMT-2000」の次の世代である第4世代通信システム(4G)のこと。固定のブロードバンド並みである最大1Gビット/秒の超高速通信を目指す点が特徴だ。第3世代移動通信システムの延長上のシステムである「LTE」(long term evolution)の一歩先の技術と言える(関連記事)。

 IMT-Advanced(4G)の標準化活動は,昨年末から本格化している。2007年10月から11月にかけて開催されたITU(International Telecommunication Union)の世界無線通信会議(WRC-07)では,IMT-Advancedが使用する無線周波数帯として,3.4G~3.6GHz帯など4つのバンドが決まった。さらに2008年1月から2月にかけて開催されたITU-Rの会合では,2011年2月に勧告を完成させるという標準化のスケジュールが定まり,無線インタフェース部分の提案受け付けがまもなく始まることになった。

 開会のあいさつをした佐藤勉総務副大臣は「アジアにおける協調を軸に,世界的に調和が取れた4Gの標準を作ることは産業界にもユーザーにも大きなメリットがある。今回のICB3G-2008を契機に,日中韓の協調を一層図っていきたい」と語った。

帯域幅の確保と新しいビジネスモデルの創出がポイント


写真4●NTTドコモが示した今後の周波数利用プランとエリア展開計画
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 会合初日である3月27日は,NTTドコモの山田隆持代表取締役副社長(写真1),KDDIの伊藤泰彦代表取締役執行役員副社長(写真2),ソフトバンクモバイルの松本徹三取締役副社長(写真3)の3人が,それぞれ4Gシステムに対する期待を語った。各社共にネットワークのキャパシティを大幅に拡大できる4Gシステムに期待する一方,いくつかの課題を指摘する場面もあった。その一つが帯域幅の確保だ。

 4Gシステムが目指す最大1Gビット/秒の通信速度を実現するためには,100MHzの周波数帯域が必要になる。しかし,連続して100MHz幅もの帯域を得ることは,現実的には難しい可能性がある。この点について,NTTドコモの山田副社長は「基本的には3.4G~3.6GHz帯を使って100MHzを利用したいが,難しい場合はスケーラブルに帯域を増やせるような仕組みをIMT-Advancedの仕様として採用するべき」と指摘した。KDDIの伊藤副社長も「帯域の確保のためには,断片化した周波数帯をあたかも連続した帯域として利用できるような仕組みが求められる。KDDIはその研究を進めている」と語った。

 もう一つのポイントは,4Gでは3Gの時代とは違うビジネスモデルが求められることだ。4Gシステムが商用化する2011年以降は,加入者の純増が見込めた3Gの時代と異なり,加入数がほとんど増えないと予測されるためである。この点に関して,KDDIの伊藤副社長は「投資コストを回収するには,インフラのコストを抑える必要がある。4Gを成功させるには,この点が最も重要になる」とした。さらには定額制の浸透によって,データ・トラフィック以外の収益源も求められている。ソフトバンクモバイルの松本副社長は,「現在はパソコンとモバイルのインターネットは分かれているが将来的には統合する。パソコンの世界の広告モデルとモバイルの世界の月額課金モデルの組み合わせが,新たな収益を生むだろう」との考え方を示した。

 なお4Gシステムが実用化する2011年以降に,2Gから3Gへの移行のように一気に4Gへの移行は進まないと見られる。NTTドコモの山田副社長は,同社の今後の周波数利用プランとエリア展開を説明。あくまで3GやSuper3G(LTE)をベースにし,4Gシステムは既存のネットワークにオーバーレイの形で導入していきたい考えを示した(写真4)。その際に端末は,4Gと3G/Super3Gのデュアルモードになるとしている。

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