MWC2008でのLTEにかかわる最大のトピックは,NECと仏アルカテル・ルーセントの開発での協業発表だった(写真1)。

写真1●提携会見時の仏アルカテル・ルーセントのパトリシア・ルーソーCEO(左)とNECの矢野薫社長
写真1●提携会見時の仏アルカテル・ルーセントのパトリシア・ルーソーCEO(左)とNECの矢野薫社長

 会期2日目の2月12日の午前にNEC矢野薫社長とアルカテル・ルーセントのパトリシア・ルーソーCEOが共同で記者会見に臨み,LTEの開発会社を設立すると発表した。「LTEへの投資額を半分にするのではなく,2倍にして開発を加速する」(ルソーCEO)のが狙いという。

 LTEは現在の携帯電話技術を進化させ,下り100Mビット/秒以上,上り50Mビット/秒以上を狙う技術。「Super 3G」や「3.9G」とも呼ばれる。2010年前後に携帯電話事業者が本サービスを開始すると見られることから,各社が開発にしのぎを削っている。

 この状況をそのまま反映していたのが,会場での展示だ。アルカテル・ルーセント,NECのほか,スウェーデンのエリクソン,モトローラ,加ノーテルネットワークスなど大手通信機器ベンダー,米クアルコムやフリースケール・セミコンダクタなどのチップベンダーが,一斉にLTE製品の動体デモを行っていた。

ノーテルは下り100メガを実現

 中でも,完成度の高い製品を展示していたのがエリクソンとノーテルだ。

 エリクソンはUSB接続する小型LTE無線モデムを開発。弁当箱大でありながらも基地局の間で問題なく通信できることを示していた(写真2)。アンテナもこの中に収容しているという。デモでの通信速度は20MHzの帯域を使い,MIMOの技術を使わない状態で下り最大9Mビット/秒程度を達成していた。

写真2●スウェーデン エリクソンのLTEモデム
写真2●スウェーデン エリクソンのLTEモデム
パソコンとUSBケーブルで接続して利用する。

 ノーテルは,会場内に基地局と端末を設置。20MHz帯域で2×2のMIMO技術を使った環境で,HD映像を流すデモを行った(写真3)。通信速度は端末当たり約50Mビット/秒。「同じ基地局に対して同時に2端末で通信したときには合計で100Mビット/秒を達成できた」という。こちらはノート・パソコンとほぼ同程度のサイズの基板で,外付けアンテナを使う環境だった。

写真3●加ノーテルネットワークスのLTEのデモ
写真3●加ノーテルネットワークスのLTEのデモ
左の2台のノート・パソコンの下の透明なケースの中がLTEのモデム。テレビ上のアンテナで2×2のMIMOを使って通信している。
[画像のクリックで拡大表示]

 このほか,ピコチップがLTE対応のフェムトセルの試作機をデモンストレーションし,4×4のMIMO技術で通信できていることを示した(写真4)。実際に動作していたが,電波は無線ではなく銅線で模擬していた。「WiMAXとLTEは変調技術がほぼ同じ。ソフトウエアの入れ替えでWiMAXに変更できる」(説明員)という。


写真4●英ピコチップのLTEフェムトセルの試作機
写真4●英ピコチップのLTEフェムトセルの試作機
ケーブルでテスターと接続して,4×4のMIMO通信を実演していた。

 今回,LTE技術を展示した各社とも「2009年後半に商用製品を出荷する」としている。