米Microsoftのプラットフォーム&サービス部門担当社長であるKevin Johnson氏は2008年2月22日付けの社員あてメモで,米Yahoo!に対する買収計画の進ちょく状況を社員に伝えた(関連記事:MSがYahoo!買収計画に関する社員あて電子メールを公開,「人材の需要はある」)。この社内メモは,買収の行方が混沌としている最中に送られたものだ。Yahoo!に買収提案を正式に拒否されたことを受け,Microsoftは直ちにYahoo!の現取締役を入れ替える方向でより敵対的な行動に移る姿勢を見せた(関連記事:「著しい過小評価」,Yahoo!がMicrosoftの買収提案を拒否ついに開戦! MicrosoftがYahoo!株主の委任状獲得に乗り出す)。

 Johnson氏は同メモで,「Yahoo!は買収提案を拒否するとのプレスリリースを出したが,当社は十分に公正な提案をしていると確信している」と記した。「合併の価値と,合併で得られる戦略的/財政的メリットについて,Yahoo!の取締役,管理者,株主,従業員と建設的な話し合いを持ちたい」(Johnson氏のメモ)。

 Johnson氏によると,Yahoo!の買収手続きは規制当局の許可を経て2008年中には完了できる見通しという。「手続きが完了するまで,Yahoo!の業務はこれまで通り続ける必要があるだろう」(同氏)。スケジュールの面では,Yahoo!が買収を受け入れた時点で「周到」な統合計画の検討を開始するとした。ただし,統合計画を実行に移せるのは,規制当局から計画承認を得てからになる。さらに,同氏は「統合作業は,合弁会社として成功するために欠かすことができない」と付け加えた。

 両社の業務統合により,Yahoo!およびMicrosoftの双方で多くの社員が職を失うことは明白だ。そのため,両社の社員は統合計画が一番の気がかりである。Johnson氏は直接この懸念に回答していないものの,統合作業は「Yahoo!とMicrosoftの(両社の)リーダー」を対象とし,「包括的」な「共同」作業となるとした。Microsoftの二流オンライン・サービスを担当している平技術者にとって,これは悪いニュースといえる。その一方で同氏は,Microsoftが「事業や技術に取り組める機会が十分ある成長中の企業」であると述べた。つまり,できるだけ多くの従業員を残す意向を暗に示している。

 両社の企業文化も悩みの種だ。一般的にYahoo!は自由奔放なシリコン・バレー文化の代表とみなされるが,Microsoftは古臭いタイプの企業と考えられている。どうしたら両社の異なる文化をうまく融合できるのだろうか。これに対し,Johnson氏は「両社の最もよい点を持ち寄る機会がある」と書いた。さらに同氏は「当社には,革新を生み出し,厳しい研究開発の問題にじっくり取り組むという文化がある」,「Yahoo!は,Webを中心とするDNA,革新的な技術,21世紀メディアの経験,広告分野の優れた能力をうまく融合している」と続けた。

 Johnson氏は,Yahoo!の消費者向けサービス・ブランドと自社オンライン・サービス「Live」「MSN」の統合方法について言及しないが,「Yahoo!ブランドの強みが,同社の買収を計画する際に大きな影響を及ぼした」と明記した。そして「Yahoo!と当社の両方から幹部が出て作業チームを作り,サービス統合戦略を検討していく」と繰り返した。

 多くの業界アナリストが指摘する通り,Yahoo!は様々な非Microsoft技術を使っている。オンライン・サービスを自社製サーバー・プラットフォーム上で運営しているMicrosoftにとって,最終的にはこの点が面倒な問題になるだろう。もっとも,Johnson氏は「当社は現実的な道を選ぶ」とした。すなわち,合併後にYahoo!のサービス運営を続けるために,Microsoft製以外のサーバー・ソリューションを使う可能性もあるのだ。その上Johnson氏は,シリコン・バレーにおけるYahoo!の「大きな」存在感を「絶対に」維持することも明言した。現在Yahoo!は,シリコン・バレー地区で1万人以上を雇用している。

 Johnson氏によると,当面のあいだは「これまで通りの事業運営」となる。「大切なのは,自分たちのするべき仕事に集中したまま,買収手続きを進めることだ」(同氏)。同氏は必要に応じて新たな情報を提供していくとした。

 社内メモ(英文)はMicrosoftのWebサイトに掲載されている。