米Yahoo!のCEOであるJerry Yang氏は2008年2月第3週,株主にあてた書簡で辛抱するように主張し,「当社は今後も独立性維持を目指す」とした(関連記事:Yahoo!が株主あての書簡を公開,MSの提示額が過小評価であることを強調)。米Microsoftに446億ドルで買収を持ちかけられてから,毎日新たな情報が次々と出るなかで,この書簡は最新の話題だ。ただし,これで終わりにはならないだろう。

 Yang氏の書簡には「当社の取締役会は,経営陣および財務顧問,法務顧問による精査結果をみて,Microsoftが当社を著しく過小評価しており,買収提案受け入れは株主の利益を最大化することにならないと確信した。この結論に至った理由を,株主の皆さん一人ひとりに知ってもらいたい」とあった。「取締役会は,業界の環境が急変する状況であらゆる戦略的選択肢を検討し続ける。全株主の利益最大化に向けた取り組み追及の手を緩めない」(Yang氏の書簡。ところで,同氏は株主あて書簡の文章を大文字で書いた。従業員に送る文章で同氏がこうした形式的な表記を使うことはない)。

 Yang氏は,Yahoo!が持っている「強みの組み合わせ」として,(1)認知度が高く敬意を払われているブランド,(2)パソコン/モバイル・ユーザーの多さ,(3)広告分野での強さ,(4)20億ドルもの現金残高,(5)様々なインフラ資産,(6)海外に対する投資という項目を挙げた。「こうした財産は,当社の価値の中心的な要素であるとともに,IT業界における主導的立場の肝だ。市場にはチャンスが溢れており,当社はそうしたチャンスを利用できる特別な位置についている」(Yang氏の書簡)。

 どうすればYahoo!は,この市場機会を過去数年間よりもうまく活用できるのだろうか。この数年でYahoo!の市場シェアと株価は落ちてしまった。さらに,Microsoft以外の提携先を探し続けるというYahoo!の対応をみると,Yahoo!自体がこのまま持ちこたえられないということや,永久にMicrosoftを無視できない状況を理解していることが分かる。2月第3週になって,Yahoo!買収の大ばくちに乗りそうな企業がもう一つ現れた。Yahoo!はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)最大手の「MySpace.com」を傘下に持つ米News Corp.に対し,提携を模索しているのだ。

 結局のところ,Yahoo!が単独で立ち向かう場合より,米Googleや米AOL,Newsとの提携の可能性があると,Microsoftは提示額を上げたくなるだろう。Yang氏はいつも通り市場機会に言及したものの,Yahoo!がオンライン広告事業や検索事業の売り上げから得た利益はGoogleのそれに及ばず,差が開く一方だ。Microsoftによる買収の可能性は,ますます現実味を帯びてきた。