BIOSTARのTA780G M2+。AMD 780G搭載マザーボードとして初めて市販された。
BIOSTARのTA780G M2+。AMD 780G搭載マザーボードとして初めて市販された。
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【グラフ1】「Sandra XII.2008.SP1」のHDD関連テスト。単位はMB/秒で右側ほど速い。
【グラフ1】「Sandra XII.2008.SP1」のHDD関連テスト。単位はMB/秒で右側ほど速い。
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【グラフ2】Sandra XII.2008.SP1でメモリー転送速度を測った結果。内蔵グラフィックスを使うと速度が落ちる。
【グラフ2】Sandra XII.2008.SP1でメモリー転送速度を測った結果。内蔵グラフィックスを使うと速度が落ちる。
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【グラフ3】3DMark06のテスト結果。AMD 780Gは690Gより確実に性能が上がっているが、現行の最も低価格なグラフィックスボードにはかなわない。
【グラフ3】3DMark06のテスト結果。AMD 780Gは690Gより確実に性能が上がっているが、現行の最も低価格なグラフィックスボードにはかなわない。
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【グラフ4】システム全体の消費電力を測定した。AMD 780G搭載マザーボードは690G搭載製品と同程度の消費電力だ。
【グラフ4】システム全体の消費電力を測定した。AMD 780G搭載マザーボードは690G搭載製品と同程度の消費電力だ。
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【グラフ5】グラフィックス機能を利用したときのシステム全体の消費電力。処理性能が上がっているにもかかわらず、消費電力のレンジはAMD 690Gとあまり変わらない。
【グラフ5】グラフィックス機能を利用したときのシステム全体の消費電力。処理性能が上がっているにもかかわらず、消費電力のレンジはAMD 690Gとあまり変わらない。
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 日経WinPC編集部は2008年2月8日、新型チップセット「AMD 780G」(2月8日時点で未発表)を搭載したマザーボードを入手、各種ベンチマークテストを実施した。AMD 780Gは「RS780」の開発コード名で呼ばれていたチップセットで、DirectX 10対応のグラフィックス機能を内蔵する点が特徴。外付けグラフィックスボードと連携して3次元(3D)画像の描画性能を高める「Hybrid Graphics(ATI Hybrid CrossFireX)」もサポートする。AMDは2007年11月時点では、「2008年2月にAMD 780Gを正式発表する」としていた。

 日経WinPC編集部が入手した製品はBIOSTARの「TA780G M2+」。東京・秋葉原のパーツショップで購入した。記事執筆時点ではAMD 780Gの公式な仕様は明かされていないが、TA780G M2+の仕様を見る限り、AMDのクアッドコアCPU「Phenom 9000シリーズ」が対応している最大5.2GHz動作(2.6GHzのDDR)のHyperTransport 3.0や、PCI Express 2.0をサポートしているようだ。サウスブリッジも最新の「SB700」。Serial ATA 3.0Gbps×6ポートを備えている。内蔵グラフィックスの名称として「ATI Radeon HD 3200」との記述がある。

 テストに使ったパーツは以下の通り。比較のため、「AMD 690Gチップセット」を搭載したマザーボードを用意した。AMD 690GはAMD製CPU向けのグラフィックス内蔵チップセットとして2007年に大ヒットした。

【CPU】Athlon 64 X2 5000+ Black Edition(2.6GHz、定格動作)
【マザーボード】M2A-VM HDMI(ASUSTeK Computer、AMD 690Gチップセット搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Barracuda 7200.10 320GB(Seagate Technology)
【グラフィックスボード】Radeon HD 3450搭載ボード(Sapphire Technology、メモリー256MB)
【OS】Windows Vista Ultimate 32ビット日本語版

 AMD 780G搭載マザーボードのデバイスドライバーは、付属CD-ROMからインストールした。M2A-VM HDMIのBIOSは最新にアップデートしてある。

HDDの処理性能はわずかに向上?


 まずはSiSoftwareの「Sandra XII.2008.SP1」を実行した。SandraはCPUやメモリー、HDDに対して演算や読み書きを繰り返すなどして、パーツ単体の処理能力を測るソフトだ。グラフ1は、Sandraの「File Systems」というHDDの読み書き性能を測定するテストの結果。上から、順次読み出し、ランダム読み出し、順次書き込み、ランダム書き込みの速度を示している。今回はOSをAHCIモードではなく通常のIDEモードでインストールした。若干の性能向上が見られるが、マザーボードが異なることによる誤差の範囲と言えなくもない。

 グラフ2は、メモリーの転送速度を測る「Memory Bandwidth」のテスト結果を示している。「内蔵」は、チップセット内蔵のグラフィックス機能を使ったときの結果。「Radeon HD 3450使用」は、外付けのグラフィックスボードを取り付けたときの結果だ。内蔵グラフィックスはメインメモリーにグラフィックス用のメモリー領域を確保する。AMD 690Gと同じく、AMD 780Gも内蔵使用時はメモリーの転送速度が抑えられる。AMD 780Gは外付けグラフィックスボード使用時に転送速度が跳ね上がっているが、これは780Gの特性というよりも、AMD 690G搭載のM2A-VM HDMIがむしろ遅すぎると言える。

AMD 690Gから描画性能は確実に向上


 次にFuturemarkの「3DMark06」を実行した。3DMark06は主にゲームにおける3D画像描画能力を調べるベンチマークソフトで、DirectX 9世代のグラフィックスチップを対象にしている(DirectX 10対応チップでも動作するが、DirectX 10ならではの機能は使われない)。AMD 690Gは、DirectX 9の仕様のうち、シェーダーモデル3.0に対応していないので一部テストが実行できない。

 その結果がグラフ3だ。グラフの伸びはAMD 780Gの結果を100としたときの相対値になっている。グラフは上から、3DMark06の総合スコア、「SM2.0」テストのスコア、「HDR/SM3.0」のスコアだ。AMD 690GではHDR/SM3.0のテストが実行できないため総合スコアが著しく下がっており比較できないが、SM2.0のスコアを見る限り、確かにAMD 780Gの描画性能は上がっているようだ。

 過去の日経WinPCのテストでは、AMD 690Gは、Intel G33やG31、NVIDIA GeForce 7050など他社のチップセット内蔵グラフィックスよりも高い描画性能を示していた。AMD 780Gは内蔵グラフィックスとしては確かに良い性能を示すと言える。TA780G M2+のBIOS設定メニューには、チップセット内蔵グラフィックス機能の動作周波数を調整する項目があった。その値を標準の500MHzから、550MHz、600MHzと変えて測定してみたが、あまり性能は変わらなかった。

 ただ、いかにAMD 780Gでも外付けのグラフィックスボードに比べると性能は低い。一番下のグラフは、Radeon HD 3450搭載ボードでのテスト結果だ。AMD 780Gのおよそ2.4倍のスコアが得られている。Radeon HD 3450搭載ボードは2008年1月末に登場したばかりの新型ながら、低価格機向けとして6000円程度で販売されている。AMD 780Gの性能はあくまでも内蔵グラフィックスとしては速い、というレベルだ。

 AMD 780Gの特徴として、Radeon HD 3450搭載ボードと組み合わせて、3D描画性能を高める「Hybrid Graphics(ATI Hybrid CrossFireX)」がある。ところが標準のドライバーでは、それらしき設定項目が見当たらなかった。BIOS設定画面にある内蔵グラフィックス関連の設定を変更しても変化はなし。まだデバイスドライバーが対応していないのかもしれない。

消費電力はAMD 690Gと同様に低い


 最後はシステム全体の消費電力だ。マザーボード以外のパーツはすべて同じなので、ここに示した値の違いは、マザーボードによるものとみなせる。同じチップセットを搭載していても、マザーボードの作りによって消費電力は変わるので、あくまでも参考にとどめてほしい。消費電力の測定には、日置電機の「パワーハイテスタ3332」を使用した。

 まずは、PCMark05でCPU関連テストの一つである「Multithreaded Test 2」を実行したときの結果だ。4スレッドを同時に実行する処理でグラフィックス性能はほとんど関係ない。グラフの縦軸がシステム全体の消費電力を示している。アイドル時、負荷時共にAMD 780Gを搭載したTA780G M2+の方が低い。先に述べたように、この結果を持ってAMD 780Gの消費電力が低いとは断じられないが、少なくとも消費電力の低さで定評のあったAMD 690G並みであるとは言えそうだ。

 次は3DMark06の「SM2.0 Graphics Test」を実行したときの結果だ。省電力機能が有効になっているため、ベンチマーク実行中でも頻繁に消費電力が上下している。消費電力の記録は1秒単位なので、1秒未満の値の変化には追従できず、このグラフからは負荷時の平均的な消費電力は判断できない。変化の幅を考慮すると、描画機能をフルに稼動させてもAMD 690Gと同等程度の消費電力と言える。もっとも、AMD 780Gの方が描画性能が高いことを考慮すると、消費電力を従来品と同程度に抑えつつ、性能を高めたと判断できる。

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