写真●イー・アクセスの千本倖生取締役会長
写真●イー・アクセスの千本倖生取締役会長
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 イー・アクセスは2008年1月23日,アッカ・ネットワークスへの株主提案について記者説明会を開催した(写真)。イー・アクセスは1月16日に,アッカの木村正治社長など現任の常任取締役3人を不再任とし,イー・アクセスから4人の取締役を選任するよう求める株主提案を行っている(関連記事)。

 会見において,千本倖生取締役会長は「株主として株価を上げるのが目的であって,イー・アクセスやイー・モバイルとの協業や経営統合は目的ではない」と強調。アッカを立て直すことで,投資を回収することが狙いであると説明した。

平均取得株価23万円に対して現在は16万円

 イー・アクセスは,1月11日時点でアッカの発行済み株式の13.1%を保有する筆頭株主。現在も買い進めており,現時点では14%に近い数字になっているという。およそ1万6000~1万7000株を保有するものと推定される。エリック・ガン取締役は,株主提案に至った背景について「一株当たりの平均取得額はおよそ23万円。現在のアッカの株価は16万円と低迷していて,株主として何か手を打たないとリスクが大きいと判断した」とする。

 また,アッカが2007年12月に総額115億円のMSCB(転換価格修正条項付新株予約権付社債)の発行を決めたことが,アッカ経営陣への不信感を強めたという。アッカはMSCB発行の目的をモバイルWiMAX事業への設備投資としており,2.5GHz帯に落選した段階で発行を取りやめている。「我々から,モバイルWiMAX事業のファイナンスは株主に迷惑のかからない方法にしてほしいとお願いしていた。しかし,アッカ経営陣は株主にとって最悪のファイナンスを選んだ」(ガン取締役)。

 イー・アクセスは,たびたび行っていた協調に向けた提案もアッカには聞き入れられなかったとしており,こうした不満が積み重なって強硬策に出た形だ。千本会長は「我々はADSL卸売り事業のプロ。1年間で株価が上がらなかったら,イー・アクセスから送り込む4人は全員クビにしていい」と強気の姿勢を見せる。

 NTTコミュニケーションズ,三井物産,イグナイト・グループといったほかのアッカ株主との関係は,「アッカの企業価値を向上させたいという利害関係は一致するので,友好関係を維持したい。ある1社は『株主価値向上に反対する理由はない』と言っている」(千本会長)とする。個人株主については「激励のメールや手紙が多く来ている。週内に1000株分の委任状が集まる」(千本会長)とコメントした。

具体的なアッカの事業改善策は公表せず

 そもそも,なぜイー・アクセスがアッカ株を買い進めたのか。イー・アクセスのガン取締役は「イー・アクセスの利益率などを考えると,同じ業態のアッカはもっと成長すると考えた」(ガン取締役)と説明する。しかし,アッカの業績はイー・アクセスの期待を下回り,「我々の売上高経常利益率が20%であるのに対し,アッカは5%。純利益率でも,イー・アクセスが12%なのに対し,アッカは3%と低い」(ガン取締役)。

 アッカの立て直し策としては,経営の非効率を取り除くことになる。ただし「まだイー・アクセスはアッカの経営に参加できていない。中に入らないと分からないことが多いので,現時点で具体的にどういう手を打つかは言えない」(ガン取締役)と,具体策への言及は避けた。

 アッカ立て直し策としてイー・アクセスとの経営統合を考えるかどうかについては,「アッカの内部を見ないと分からない。すべての決定は経営に参加した後に判断する」(ガン取締役)とした。なお,株式公開買い付け(TOB)による子会社化は「現時点では全く考えていない」(千本会長)と否定した。