発展途上国の子供向けに低価格ノート・パソコンの提供を進める非営利団体One Laptop Per Child(OLPC)は,平均で毎日200万ドルの募金が集まることから,「Give One, Get One」活動の期間を2007年12月31日まで延長した。この活動の対象地域である米国およびカナダの消費者は,合計399ドルを支払って199ドルのノート・パソコン「OLPC XO」を1台購入し,残りの200ドルでもう1台を発展途上国の子供一人に配布できる。OLPCは,これまで11月末に同活動を終える予定だった(関連記事:「1台提供して1台入手しよう」 -- 非営利団体OLPCがノートPC無償提供活動を開始)。

 OLPC創設者のNicholas Negroponte氏は「みなさんから多大な支援を受けることができて,心から満足し,勇気づけられている」と述べる。「個人で活動に参加するほか,自分と関係のある地域や公的組織に働きかけようとする多くの方々から,期間の延長を求められた。そこでGive One, Get One活動を2007年末まで続けることにした。我々はこの延長期間中,2008年初めに寄付のみを受け付ける活動へ移行できるよう協力を求めていく。できるだけ大勢の人にホリデー・シーズンの“分け与える気持ち”を発揮してもらえればと思う」(Negroponte氏)。

 このペースを保てば,OLPCは2007年中に約50万台のXOをさばけることになる。OLPCがこれまでに受け取った代金で,発展途上国の入手条件を満たす子供に7万台以上のXOを提供できる。この数字は大失敗でないものの,OLPCが自ら設定した崇高な目標からはかけ離れた達成度だ。OLPCは,2008年末までに1億5000人へXOを配りたいと考えている。現在OLPCが獲得できた唯一の大口契約は,ウルグアイ向けの10万台だけである(関連記事:100ドルPCプロジェクトのOLPC,ウルグアイで大口契約,最大40万台供給へ)。ただし,Negroponte氏によると,間もなくペルーから25万台分の注文を得られるという。

 OLPCは,XOの価格が当初の予定を上回ったことと,予想していなかった競争相手が出現した影響で,スタート・ダッシュに失敗している。Negroponte氏はXOを100ドルで販売するつもりだったが,現時点で200ドルを切ることができず,これから徐々に値下げしていく。そのうえ,米Intelおよび米Microsoftは,OLPCが両社のライバル・ベンダーからハードウエアおよびソフトウエアの供給を受けることにしたため,当初XO計画を潰そうとした。しかし,両社はその後OLPCの活動支援を約束し,MicrosoftはXO向け軽量版Windowsの開発に取り組んでいるらしい(現在のXOはLinuxベースのOSが動く)。なお,IntelはXOと競合するWindows対応の発展途上国向け教育用ノート・パソコン「Classmate」を販売している(関連記事:Intelが100ドルPCプロジェクトのOLPCに参加N・ネグロポンテ氏,インテルの低価格PC無償配布プログラムを批判)。

 いずれにしろ,XOは頑丈なノート・パソコンだし,OLPCの目標もちょっとやそっとでは崩れない利他的なものである。問題は,このような善意がパソコンというハードウエアを販売するビジネスの現実に耐えられるかどうかだ。米国またはカナダに住んでいる方で,何か影響を与えたいと思っているのなら,Give One, Get One活動に参加するか,XO配布用の資金を直接寄付してはどうだろう。