写真●通信事業者のトップが一同に集まり議論した総務省の合同公開ヒアリング(撮影:都築 雅人)
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 総務省の情報通信審議会電気通信事業部会の接続委員会は11月16日,NTT東西地域会社のNGN(次世代ネットワーク)の接続ルールの在り方を検討するために,大手通信事業者のトップなどへの合同公開ヒアリングを開催した(関連記事)。

 合同公開ヒアリングでは,NTT東日本の古賀哲夫副社長,NTT西日本の森下俊三社長,KDDIの小野寺正社長兼会長,ソフトバンクの孫正義社長,イー・アクセスの安井敏雄社長,ケイ・オプティコムの田邉忠夫社長,USENの宇野康秀社長ら大手通信事業者のトップが一同に顔をそろえた(写真)。各社の社長がまずNGNの接続ルールの在り方についてプレゼンテーションし,その後で質疑やディスカッションを繰り広げた。

「他社は独自のIP網を構築可能,NGNに規制の必要なし」とNTT東西

 今回のヒアリングでは,(1)NTT東西のNGNの設備を「指定電気通信設備」として規制対象にするべきか,(2)NGNの機能や設備のアンバンドル化の是非,(3)NGNの接続料の算定方法──について各社がそれぞれの見解を示したのに加えて,NGNのアクセスとなる光ファイバの貸し出し方式についての議論が展開された。

 (1)についてNTT東日本の古賀副社長は,「NTT東西が競争促進に向けて積み重ねてきた取り組みによって,他社は独自にIP通信網を構築できる環境が十分に整っている」として,指定電気通信設備の対象とすべきではないと主張。NTT西日本の森下社長も,「他社は独自にIPネットワークを構築済みであり,当社に匹敵するブロードバンド・ユーザーを獲得している」などと指摘して,同様に指定電気通信設備の対象外にすべきだと主張した。

 これに対して,KDDIの小野寺社長は「NGNはボトルネック設備であるアクセス回線と一体で提供されるネットワークであり,指定電気通信設備として,接続条件の透明化を図ることは,競争促進の上では必須かつ当然」と反論。ソフトバンクの孫社長も,NGNにボトルネック性があると指摘した上で「1分岐単位の開放が実現しない限り,第一種指定電気通信設備として指定すべき」と強調し,NTT東西と真っ向から対立する形となった。イー・アクセスとケイ・オプティコムも,KDDIとソフトバンクと同様に,NGNを指定電気通信設備として指定するべきとの見解を示した。

 アンバンドル化については,「NGNを含むIP網はネットワーク全体として機能するものであり,機能の足し算で成り立つ固定電話網と同様に細分化された設備・機能のアンバンドルを適用することは困難」(古賀副社長)というNTT東日本の主張に対して,ソフトバンクの孫社長は「接続事業者が希望する接続形態を実現するために,アクセス網は局舎単位での接続点設置が必要として,アンバンドル実施の必要性を唱えた。イー・アクセスの安井社長もアンバンドルを実施すべきだと述べ,具体的にアンバンドルで提供する機能として,NNI(network-network interface)のインタラクティブ通信機能やイーサ通信機能などを挙げた。

 (3)の接続料の算定方法については,「接続料金は提供されるすべてのアンバンドル機能に対して設定すべき」(イー・アクセス),「NTTのNGNに係る新たな設置区分を設け,会計の透明化を図ることが必要」(ソフトバンク)などの意見が出た。

「光ファイバ共用により1回線のコストは600円程度になる」と孫社長

 ヒアリングの中で最も白熱したのが,NGNのアクセスとなる光ファイバの貸し出し方式についての議論。NTT東西は現在,共用型の光ファイバを最低8分岐単位で貸し出しているが,光ファイバを借りる立場であるKDDIやソフトバンクなどは複数の事業者の共用によって1分岐単位での貸し出しを要求しており,両者が真っ向から対立する形となった。
 
 NTT西日本の森下社長は,「OLT(光信号伝送装置)の共用は,設備競争を阻害するものであり,競争による顧客の利便性向上が図られなくなる」とし,共用による1分岐単位の貸し出しに対して反対する姿勢を鮮明に打ち出した。また,NTT東日本の古賀社長は,分岐方式は過去6年間で4回変更があったことに触れて「今後も未来永劫8分岐が続くとは限らない」と説明。さらに「現行の装置や分岐数を固定的にとらえてOLTなどを共用すると,今後の新サービス提供が困難となる」として,NTT西日本と同様に,8分岐の共用に対して反対の立場を示した。

 これに対して,ソフトバンクの孫社長は光サービスでNTT東西のシェアが70%に達している現状を「独占が進展している」と指摘。さらに,ADSLの場合は1回線単位で開放されたことによって競争環境が実現できたのに対し,光ファイバが8分岐回線単位のままでは「稼働率の向上や採算性が見込めず,競争が発展しない」との意見を述べ,1分岐単位での開放を強く求めた。

 また,孫社長は「共用によって,1回線あたりのコストは600円程度になる。消費者のためにも,より安く,地域格差をなくすように話し合ってルールを決めるべきだ」とNTT東西に対して意見。これに対してNTT西日本の森下社長は「共用するとサービスが同じになるので競争にならなくなる。それなら,(光ファイバを既に持っている)KDDIやイー・アクセスと一緒にやればどうか」と反論し,話し合いは平行線をたどった。