写真●左から出光興産広報室広報課課長の山中敏之氏、キヤノン渉外本部ウェブコミュニケーション部部長の村上潤一氏、三井物産広報部編集制作室の木村陽香氏
写真●左から出光興産広報室広報課課長の山中敏之氏、キヤノン渉外本部ウェブコミュニケーション部部長の村上潤一氏、三井物産広報部編集制作室の木村陽香氏

 2007年11月7日に東京ミッドタウンで開催されたカンファレンス「NET Marketing Forum」で、日経パソコンが2007年7月~9月に実施した「企業サイトランキング2007」において高ポイントを獲得した「出光興産」「キヤノン」「三井物産」の3社がパネル・ディスカッションを実施。直近に行ったサイト・リニューアルの狙い、企業情報の見せ方、クロスメディア戦略などについて議論した。

 出光興産は、東京証券取引所に上場する1カ月前、2006年9月に全面リニューアルしたサイトを公開した。同社は、「社内に30人のWeb担当者を置き、広告代理店・Web製作会社とコンテンツを企画開発し、定期的に社外コンサルティング会社の診断を受診する体制を採っている」(広報室 広報課山中敏之 担当課長)。

 リニューアルにあたっては、広告代理店、製作会社とヒアリングを重ねて、「使い勝手」「誘導性」「広告媒体との連携」「双方向性機能」などの課題を抽出し、解決を図った。また、石油化学、製油所、アグリバイオなど同社が手がける様々な事業分野ごとに設けているサイトのフォーマットを統一した。リニューアル後には、アクセス数が1.8倍に増加したという。

 同社はさらに、上場を機に、IR情報のトップページに株価をリアルタイム表示させたり、業績などの経営情報に関するグラフを東証への報告から自動的に作成できるようにするなどして、投資家向け情報の露出度を高めた。また、各部署が情報を掲載するにあたっては、広報室の承認を必要にするほか、文字、色の使い方、ボタンの置き方などを規定した170ページにわたるガイドラインを各部署に配布して、統一したデザインを維持できるようにしているという。

 キヤノンは、「Webはブランドを映す鏡」(渉外本部 ウェブコミュニケーション部 村上潤一 部長)として、Webガバナンスの重要性を指摘。Webガバナンス実行の4つの手段として、
(1)経営トップの指示、
(2)人的リソースの集中、
(3)予算の集中、
(4)社内ルールの徹底、
を挙げた。

 2005年8月のリニューアルでは、動線コントロールの考え方として「百貨店方式」と呼ぶ考え方で、お客(訪問者)の利便性と店(企業)の訴求をバランスよく取り入れるようにしたという。

 具体的には、
(1)売る側の都合ではなくお客にとって分かりやすくする、
(2)入り口付近にニーズの高い製品を置く、
(3)百貨店の各フロアのレイアウトは自由に設計するが、ユーティリティ設備は共通にする、
などを挙げた。

 また、「会社情報」「投資家向け情報」「採用情報」をトップページに意識的に置いていることを“ギミック”として称して紹介した。

 さらに、もともと、キヤノンとキヤノン販売(現在はキヤノンマーケティングジャパン)の2つに分かれていたWebサイトを「canon.jp」に統一した「One Canon Site」プロジェクトについても説明。複数のサイトを統合する際のガバナンスの基本方針として、分かりやすいドメイン名を持った基盤を作成しておき、統合性を先に立てて自発的な移行を促すやり方を「Build and Scrap」方式として紹介した。

 三井物産は2006年6月に実施したリニューアルにあたって、「サイト内検索、アクセスログ解析、サイト内アンケート、代表電話への問い合わせ内容、営業本部へのヒアリングなどを実施して問題点を確認した」(三井物産 広報部 編集制作室 木村陽香 氏)。

 その結果、アクセスの多い「会社概要」「歴史」のほか、ぜひ読んでほしい「三井物産の取り組み - 挑戦と創造 - 」、検索の多い「関連会社情報」などへのリンクをトップページに表示させるようにしたほか、投資家情報の内容充実、CSR情報のサイト内への統合などを行った。また、主要な関係会社をサイト内で検索する方法として、「営業本部別」と「50音別」の2種類を設け、同社の業務をよく知っている人にも、そうでない人にも目的とする会社を探しやすくした。

 このほか、三井物産は、同社サイト内の子供向けのサイト「キッズMBK」の「ブッサン人の挑戦」というコンテンツを紹介した。これは親の仕事を子供に説明するために社内報で1985年から連載している記事をWebコンテンツ化したもので、社内や取材を受けた人たちにも好評で、社内満足度の向上に役立っているという。

 クロスメディア戦略に関しては、出光がCMと連携させることによってサイトにユーザーを誘導する「ウルトラ出光人クイズキャンペーン」を、キヤノンがリアル・イベントと連携させて11月30日から始める「ENJOY PHOTOキャンペーン」について紹介した。「ウルトラ出光人クイズキャンペーン」のクイズは出光興産の事業内容について質問するもので、正解者から抽選で5000円分のプリペイドカードなどを送るというものである(キャンペーンは既に終了)。

 「企業サイトランキング2007」は主要500社のWebサイトについて、基本情報、ブランディング、リスク管理、使いやすさ、アクセシビリティの5分野で合計71項目について専門スタッフが調査し、結果をポイント制でランキングしたもの(関連記事:「日経パソコン」企業サイトランキング 2007---主要500社のWebサイトを評価)。

特集●NET Marketing Forumに見るマーケティング・イノベーション

■変更履歴
当初記事で「One Cannon Site」としていましたが、「One Canon Site」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2007/11/08 13:45]