写真●東京・永田町にあるアイピーモバイルの本社入口に貼られた紙。本日11時に業務を停止し,扉は固く閉ざされている
写真●東京・永田町にあるアイピーモバイルの本社入口に貼られた紙。本日11時に業務を停止し,扉は固く閉ざされている
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 資金調達で携帯電話事業への参入が難航していたアイピーモバイルは30日,東京地方裁判所に破産の申し立てをした。負債総額は約9億円。このうち「約7億円は電波利用料」(申請代理人を務めた丸の内中央法律事務所の近藤節男弁護士)という。同社は東京地裁に申し立てが受理された11時時点で既に業務を停止している(写真)。31日17時には破産管財人が選定される予定。

 アイピーモバイルは香港の通信事業者ディスタコムに出資を要請(関連記事)して参入を計画していたが,「出資は11月9日のサービス開始期限の延期と,開設計画の変更を総務省に認めてもらうことが条件となっていた。期限の延期と計画の変更を総務省が認めなかったため,出資の話はなくなった。基地局はほとんど設置しておらず,その資金もない。11月9日までのサービス開始が不可能な状況になり,免許の返上を決めた。免許の返上を決めた以上,存続基盤がないので自己破産を申し立てた」(近藤弁護士)という。

免許取り消しは年明け,空き周波数の使い道はその後に検討

 総務省は同日15時,アイピーモバイルの免許返上について会見を開き,これまでの経緯を説明した。アイピーモバイルの杉村五男社長は同日10時に総務省を訪ね,免許(2GHz帯周波数を使用した特定基地局の開設計画の認定)の返上を申し出る書類を提出。総務省がそれを受理した。返上の理由は「開設計画通りの資金調達ができておらず,計画を進めることができないとしていた」(電波部の渡辺克也移動通信課長)という。

 ただし,「受理しただけで,現時点で免許の取り消しは終わっていない。利害関係者の意見聴取や電波監理審議会の諮問などを行わなければならず,それに通常1~2カ月かかる」(渡辺課長)。ソフトバンクが1.7GHz帯の免許を返上したときも取り消しまで2カ月かかったという。このため,正式な免許取り消しは年明けになると見られる。

 アイピーモバイルの免許が取り消しになると,2GHz帯の15MHz幅は空き周波数となる。この使い道については「取り消し手続きが完了した時点で,改めてどうするかを検討する」(渡辺課長)とした。空白地帯となった周波数は,まず「IMT-2000プランバンド」としてどう活用するかを検討することになる。なお,ITU(国際電気通信連合)はモバイルWiMAXを「IMT-2000」の一方式に加えたが(関連記事),2GHz帯でモバイルWiMAXを利用するためには技術基準の見直しが必要になるという。

[発表資料(総務省)へ]