資金調達で携帯電話事業参入が難航しているアイピーモバイルは23日,香港の通信事業者ディスタコムに出資を要請していることを明らかにした。「ディスタコムからはLOI(関心表明書)という形で,3月までに日本円で140億~150億円出資するというコミットを得ている」(アイピーモバイル)という。「出資比率は決まっていないが,過半数以上の株主になってもらう方向で話を進めている」(同)。

 通信方式もこれまで予定していた「TD-CDMA」から「TD-SCDMA」に変更する。TD-SCDMAはIMT-2000の標準規格で,中国や韓国で既にトライアルが始まっているという。「中国では中国移動(チャイナ・モバイル)が北京オリンピックの開催に向けて3万人のユーザーを対象にトライアルを開始している。このため,基地局や端末の調達面で競争力が期待できる」(アイピーモバイル)とする。また「TD-SCDMAはTD-CDMAと同じTDDのバンドを使うので,2010M~2025MHz(アイピーモバイルに割り当てられた周波数)でそのまま利用できる」(同)。

 ただし,「TD-CDMAで免許の交付を受けているので,今週中に総務省に対して開設計画の変更申請を出す予定である」(同)。11月9日にサービス開始期限が迫っていることについては「延期できないものと考えている。このため,11月9日時点はTD-CDMAでまずサービスを開始する。基地局数はまだ決まっていないが,1局といったレベルではない。並行してTD-SCDMAの実証実験も実施し,途中からTD-SCDMAに巻き取っていく計画。中国では既に何万もの基地局が稼働しており,実績がある。国内での実証実験はそれほど長くかからないと見ている」という。

参入を認めるかは「変更申請の内容次第」

 この件について総務省は「2GHz帯は制度上,TD-CDMAとTD-SCDMAの両方式が可能になっているので,その点では問題ない。ただ,通信方式が変わることは置局設計からすべて変わってしまうことを意味しており,簡単な話では済まされない」と話す。

 仮に11月9日にサービスを開始できたとしても「(2005年時点から)5年以内に各管轄局で人口カバー率50%以上を達成」という条件が残っている。これを達成するための現実的な計画を出し,「それを裏付ける資金の調達計画,置局設計,保守計画,販売オペレーションなどをきちんと詰めて申請すれば参入できる可能性は残っている」という。とはいえ,資金調達の面で頓挫(とんざ)した前科があり,人員などの体制面も現状は縮退している。「当然,厳しい判断になる」(総務省)。