総務省は9月18日,販売奨励金やSIMロックの是非,MVNO(仮想移動体通信事業者)の促進策など,今後の携帯電話のビジネスモデルを議論する「モバイルビジネス研究会」の第10回会合を開催した(写真1)。

写真1●モバイルビジネス研究会 第10回の会合の様子
写真1●モバイルビジネス研究会 第10回の会合の様子
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 前回会合は,NTTドコモやKDDI,ソフトバンクモバイルの各社長が参加し,報告書案に対して難色を示す意見を連発(関連記事)。最終報告書の行方に注目が集まったが,大筋の変更はなく軽微な修正で終わった。6月の報告書案で打ち出した「端末価格と通信料金を区分した分離プランや利用期間付き契約を2008年度から部分導入する」「SIMロックは2010年時点で解除を法制的に義務付ける方向で検討」といった点に変わりはない。

 分離プランについては「事業者の自主的な取り組みを基本とすべき」(ソフトバンクモバイル)といった意見が出ていたが,「分離プランの具体的なメニューは一意に決まるものではなく,各社の創意工夫により自らの経営判断で決定されるもの」なので,そもそも報告書案に問題はないというスタンス。ただし,導入時期に関してはある程度統一しなければユーザーに混乱をきたす恐れがあるので,「行政指導などを契機に円滑な導入を実現することが期待される」と行政が介入する理由を説明している。

 また「端末販売奨励金は従来通り電気通信事業費用に計上すべき」(NTTドコモ)という意見に対しては,「端末販売は電気通信事業ではなく,これに付帯する事業であり,端末販売奨励金を付帯事業の費用として計上することには合理性がある」と一蹴。さらに「事業会計の継続性を維持する観点から電気通信事業収入の別勘定項目の費用に計上することも考えられるが,その場合も,当該費用については電気通信役務の原価から除くことが適当」と報告書案の方針を貫いている。

 MVNOの促進は,報告書案から方針を若干強化した印象だ。携帯電話事業者による卸電気通信役務に関する標準プランの策定・公表は,MVNOの新規参入に際しての予見可能性を高める観点から,「各事業者で積極的に取り組みが行われることが望まれる」とする旨の但し書きを追加した。またMVNOのコンタクト・ポイントは携帯電話事業者側だけでなく「行政当局でもMVNO関連施策の推進窓口を一元化し,コンタクト・ポイントの明確化を図ることを検討することが適当」とする方針を追加した。

2015年時点のMVNO関連市場は約2兆1000億円

 今回の会合では,研究会の構成員を務める野村総合研究所(NRI)コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング部グループマネージャーの北俊一・上級コンサルタントにより,「MVNO活性化による経済効果の試算」と題するプレゼンテーションも実施された。

 北・上級コンサルタントによると,今後MVNOの参入促進が順調に進むと,「2015年時点のMVNO関連の端末出荷台数は約1700万台,回線数は約4300万回線。市場規模は端末が約5000億円,通信事業関連は約1兆6000億円になる」という。ただし,これは潜在的な市場から算出したもので,MVNOだけでなく,携帯電話事業者自らがその市場を狙ってくることが考えられる。このため,「実際にはこの市場をMVNOと携帯電話事業者で分け合う形になる」(同)。

写真2●今後の継続的な取り組みを強調した増田寛也・新総務大臣
写真2●今後の継続的な取り組みを強調した増田寛也・新総務大臣
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 さらに,これらはすべてが新規市場ではなく,既存の携帯電話の置き換えも含む。2台目需要を喚起するような新しい市場は全体の約8割と想定すると,「実際の端末市場は約2600億円,通信事業関連は約1兆円になる」(北・上級コンサルタント)とした。「低料金だけを訴求するローコストMVNOではなく,新しい付加価値を提供するMVNOの参入を促進させることで,ユーザーの利便性向上と市場拡大の両方を実現しなければならない」(同)という見解を示した。

 会合中盤では増田寛也・新総務大臣も飛び入り参加した(写真2)。「モバイルビジネスにおける料金の透明性や公平性に関する数多くの課題についてこれまで10回にわたって議論していただいた。今回の報告を受け,政策パッケージとして『モバイルビジネス活性化プラン』を作成し,2011年を目標に継続して施策を展開していきたい」と説明し,単なる報告書の作成だけでなく,オープン型モバイルビジネスの実現に向けて今後も継続して取り組んでいくことを改めて強調した。

[総務省のサイト(モバイルビジネス研究会)]