米Dellが6月の最終週に,カラフルな消費者向け新型ノート・パソコン製品系列を発表した。なぜこれがニュースになるのだろうか。パソコン・メーカー大手のDellは2006年の1年間,顧客サービスに対するクレームや品質問題,パソコン組み立て時間の長期化,様々な財政面や市場シェアに関する問題で,打ちのめされて続けていた。かつて世界最大のパソコン・メーカーであったDellだが,ライバルの米Hewlett-Packard(HP)を追う2位に落ち,大幅な戦略変更を実施し,アウトレット店舗で一部製品の販売まで始めた(関連記事「Dellが小売戦略を変更,6月からWal-Martの北米3500店舗でPC販売へ」)。数カ月前にはCEOを退任させ,創業者のMichael Dell氏が最高意思決定者に復帰した(関連記事「DellがCEO交代,設立者Michael Dell氏が返り咲き」)。

 CEO復帰以来Dell氏が実施した行動は,ほぼ当たり前の対策であるかもしれないが,うまく効果を上げている。例えば,シンプルに顧客フィードバック受け付けサイトを開設し,Dellに対して望む変更を尋ね,希望の多かったものから順次対応してきた。今回発表したカラフルな新型ノート・パソコンは,Dellが顧客の求めに応えた最新の事例である。ほとんどの企業は顧客中心主義を掲げているが,この数カ月間にDellがとった動きは,透明性が高く,顧客の必要性に対応しようというDellの熱意がよく感じられる。

 このカラフルな新型ノート・パソコンは,Dellの売上高で15%しか占めない消費者向けの「Inspiron」製品系列に含まれる。カラフルなモデルをリリースする目的は,明らかに販売台数の増加だ。こうした色鮮やかなパソコンを,最近Dellが実際に見て触れる小売業の世界へ移りつつあることと合わせてみると,Dellがどこを目指しているかよくわかる。新モデルの「Inspiron 1420」は,3種類のシリーズと,燃えるようなピンクや濃厚な茶色など8色のきょう体を用意する。技術と同じくらい個性を重視する消費者が増えており,そうしたユーザーはこのモデルに魅力を感じるはずだ。

 さらにDellは,最近ほかの変革にも取り組んでいる。Dellは,環境保護団体のグリーンピースが四半期ごとに発表する“環境に優しい”電子機器メーカー調査報告書で,中国のLenovo Group(聯想集団)と同点2位になった。ただし,1位はフィンランドNokiaが取った(グリーンピースの発表)。そのうえ,「Ubuntu Linux 7.04」をノート・パソコンにプリインストールし,Linuxパソコンの拡充を進めている(関連記事「Dell,米国消費者向けPCの一部モデルでUbuntu Linuxを正式提供へ」)。