米Atariが1980年代に人気アーケード・ゲーム「パックマン」のテーブルトップ版を登場させたのを最後に,「ハイテク・テーブル」と呼べる存在はなかった。ところが米Microsoftは5月29日(米国時間),「Surface」と呼ぶ新しいタイプのテーブル版コンピュータを2007年終わりに出荷すると発表した。「Milan」という開発コード名の付いたハイテク・テーブルは,完成まで6年間を研究に費やした。「Windows Vista」のリリースにあれほど長くかかった会社のことだから,何の不思議もない(関連記事:指で操作可能なテーブル型情報端末「Microsoft Surface」,2007年末に登場)。

 MicrosoftのCEOであるSteve Ballmer氏は,「Surfaceを利用すれば,今までよりずっと直感的な方法で技術を利用できるようになる」と述べる。「Surfaceが数10億ドル規模の事業になるとみており,『surface computing』(表面コンピューティング)技術はテーブルの天板からカウンター・トップ,廊下の鏡にまで広まるだろう。Surfaceは,こうした将来を実現する第一歩である」(Ballmer氏)。

 もちろんMicrosoftは,第一歩を踏み出した後,技術的に失敗してこっそり逃げ出すことで有名だ。Surfaceを「時間の無駄」と決めつけるにはまだ早すぎるが,Officeアシスタントの「Clippit(クリッパー)」とそっくりということにしておく。別の方法で表現しよう。数年後にはコンピューティング技術が間違いなく普及するし,Surfaceの遠い子孫がその一角を占めるだろう。そうなるまでには,まさに歯を磨こうとしたタイミングで,Surfaceが「ひげを剃ろうとしているようですね。お手伝いしましょうか」と余計な口出しをする事態も容易に想像できる。まったくもう。

 この記事があまりにも馬鹿馬鹿しくなる前に,Surfaceの最初のバージョンが消費者向けでないことを指摘しておく。この製品は,ホテルやカジノといった特定市場を対象としているのだ。Surfaceベースのコンピュータは,ギャンブルやチケット販売などの目的に利用される。したがって当面の間,ひげは自分の手で剃らなければならない。

 MicrosoftはSurfaceを,カリフォルニア州カールズバッドで開催された年次カンファレンスD:All Things Digitalで発表した。このカンファレンスに登場した革新的なデバイスとしては,米LiveScribeのペン型コンピュータ(ほら,タブレットPCは時代遅れになると書いただろう)や,米Palmの新型モバイル機器などがあった。恐らく携帯用のひげそりだろうが,何ともいえない。