新しいヒート・シンク圧着手法の概念図(IBMのリリースから引用)
新しいヒート・シンク圧着手法の概念図(IBMのリリースから引用)
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樹脂をより均一に塗布するための溝の形状(IBMのリリースから引用)
樹脂をより均一に塗布するための溝の形状(IBMのリリースから引用)
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 米IBMが米国とスイスで現地時間3月22日,新しいLSI冷却技術「high thermal conductivity interface technology(高熱伝導率インタフェース技術)」の詳細を発表した。同技術を電子基板へのLSI実装時に適用すると,LSIの冷却効率を大幅に向上できるという。

 この技術は,IBMの研究所IBM Zurich Research Laboratoryが中心となって開発した。概要は2006年10月に公表済み(関連記事)。

 LSI冷却時には,LSIとヒート・シンクなどとのあいだに特殊な樹脂材料を塗布し,接触性を高めて熱を移動しやすくする。この樹脂材料には,熱伝導性を高める目的で,マイクロ・メートル大の金属またはセラミックスの粒子を入れる。ただし,粒子の含有率を上げても,冷却効率の改善は頭打ちになってしまうという。また,塗布する樹脂の厚みが薄いほど全体の冷却能力は高まるが,ヒート・シンクをただ圧着して樹脂を延ばすとLSIが損傷することもある。

 そこでIBMは,圧着時に樹脂が延びる過程を詳しく調べ,より薄く均一に塗布できる手法を開発した。具体的には,圧着面に樹木の枝がつながったような構造で,深さがマイクロ・メートル程度の溝を設け,LSIとヒート・シンクの圧着を行った。

 その結果,かける圧力を減らしても樹脂内の粒子が均一に広がるようになり,樹脂自体の厚みは従来の3分の1になったという。樹脂部分の熱抵抗も,3分の1未満に減らせる。少ない圧力でLSIを実装できるため,LSIの損傷も減らすことができる。

 IBMでは,既存のLSI製造工程に改造を加えるだけで,この冷却技術を導入できるとみる。現在LSI製造装置メーカーなどと協力し,対応ツールの開発に取り組んでいる。

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