写真 アッカ・ネットワークスの鈴木龍雄・執行役員ソリューション営業本部長
写真 アッカ・ネットワークスの鈴木龍雄・執行役員ソリューション営業本部長
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 アッカ・ネットワークスはオフィス用途以外へのネットワーク提供と,それをベースにした法人向けソリューション作りに注力している。「この分野ではADSLの需要はさらに伸びる」と語る鈴木龍雄・執行役員ソリューション営業本部長(写真)に今後の戦略を聞いた。(聞き手は山崎 洋一=日経コミュニケーション

――今年初めにアッカの閉域網と協業パートナの商品(アプリケーションなど)を組み合わせ,パートナからソリューションとして提供していく新戦略を打ち出した。

 感想を言えば,手応えを感じている。つまりASP事業者やシステム・インテグレータなどのパートナから「これまではオフィスの事業用に回線を販売してきたが,ブロードバンドがこれだけ普及して安くなってくると,オフィス以外の業務用途のニーズも結構増えてきている」という話をよく聞くからだ。

 今年このソリューションで協業したのは大塚商会,ウィルコム,レブルシステムズ,三菱電機情報ネットワーク,カテナの5社。最も新しい協業先であるカテナは,気象庁の地震速報システムをアッカの閉域網を使って提供するサービスを開始した。

――オフィス用途以外の事業で使うブロードバンド・ソリューションとは例えば何か。

 例えばデジタルサイネージ(電子看板)。駅に掲示されている紙の看板が,今後プラズマテレビに表示するデジタル看板に変わってくる。そこへのデータ配信に,ブロードバンドが必要になる。こうした用途においてブロードバンド回線の料金が高いと,コスト的に見合わない。デジタルサイネージの場合,FTTHではコストが高い。5分おきにコンテンツを更新するわけでもないので,リアルタイム配信の必要もない。そこでADSLの引き合いが増えてきている。

 私見だが,ブロードバンドのオフィス・ニーズは頭打ちになってきている。しかしブロードバンドが活用されていない産業はまだある。工場のラインやデジタルサイネージのような「アウト・オブ・オフィス」のマーケットはものすごくある。それはプラズマテレビの低価格化のようにデバイスの進化によって生まれてくるマーケットでもある。こうしたマーケットでは必ずしもリッチな帯域が必要というわけではない。

 アウト・オブ・オフィスの用途でという前提でコストの目安を紹介すると,スペックを落としたりしてオーダーメイドに近い形で提供するADSLが,光のおよそ5分の1程度のコストに落ち着くケースもある。アッカのADSL全体では純減傾向にあるが,法人向けは純増傾向にある。

――なぜそうしたソリューションに注力するのか。

 これからはあらゆるネットワークが出てくる。光は敷設が大変だし納期も長い。そうすると手ごろなものが見直される。ADSLがそうだしPLC(高速電力線通信)もそうだ。コストや展開のしやすさなどトータルで見れば,光は必ずしも万能といえない。ページャー(無線呼び出し)のような帯域が細くてさらに安価なネットワークも,これから見直される可能性はあると思っている。イン・オフィス(オフィス内用途)では光が優位に立つが,アウト・オブ・オフィスでは光だけではないということだろう。

 つまり今後はネットワークをハイブリッドで使う提案が増えていくと思う。アッカの戦略はモバイルも有線も提供するし,有線は光もADSLも手がけるというもの。WiMAXをやることになれば,それもアクセスの一つという位置付けになるだろう。

 また当社は以前からM2Mへの注力を表明しているが,ユビキタスとは地味に何かを提供していきながら形成していくものであり,近未来にいきなりそうなるようなものではない。地味なネットワーク接続で,ときには失敗から学んだりしながら行き着く。機器と機器がつながれば,オフィス外のネットワークも普及し,そうした取り組みの結果アッカがユビキタスのリーダー的存在になれればと思う。