写真1 総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課の谷脇康彦課長
写真1 総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課の谷脇康彦課長
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写真2 MVNO協議会の会長を務める日本通信の三田聖二社長
写真2 MVNO協議会の会長を務める日本通信の三田聖二社長
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 MVNO(仮想移動体通信事業者)協議会は12月17日,第7回会合を開催した。MVNOは,携帯電話事業者(MNO)から通信設備を借りてサービスを提供する事業者のこと。今回の会合では,総務省が12月13日に発表した「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」(MVNO事業化ガイドライン)の改正案(関連記事)について解説した。

 講師として登壇した総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課の谷脇康彦課長(写真1)は,「今回の見直しは,新しい規制を入れたり,規制を緩和したりするものではない。現在の電気通信事業法と電波法に基づき,MNOとMVNOとの関係を具体的に規定するのが狙い。ただ,中身が大きく変わっていないとはいえ,市場の変化に合わせ,より詳細に具体化した」と改正の狙いを説明した。

 改正案のポイントは,(1)MVNOに対してビジネスやシステム面を支援するMVNE(mobile virtual network enabler)を定義,(2)MNOとMVNOの関係は,「卸電気通信役務の提供」と「事業者間接続」の両方の形態があり,MNOが接続に応じる必要がない場合を具体的に列挙,(3)MNOとMVNOの間の紛争処理手続き(あっせんや仲裁,裁定など)を具体的に整理,(4)MVNOの利用にかかわる周波数についてもMNOの利用として扱う旨を明確化--などである。

 例えば(2)では,電気通信役務の円滑な提供に支障が生じる恐れがある,接続に応じるための回線設備の改修等が技術的・経済的に著しく困難,といった場合はMNOはMVNOの接続要求に応じる必要がないとする。谷脇課長はガイドラインにある接続義務を「ネットワークの開放義務とは違い,MNOは必ずMVNOに解放しなければならないわけではない。しかし,接続を拒否する場合は合理的な理由が必要。合理的な説明ができなければ接続の義務が生じる」と説明する。

 また(4)はMVNOの接続要求に対し,MNOが「周波数のひっ迫」を理由に接続を拒否した場合にどう対処していくかを規定したもの。「MNOにとっては自社のエンドユーザーも,MVNOも同じユーザーの扱いになる。自社のエンドユーザーとMVNOのユーザーを合わせて全体で周波数がひっ迫した場合は周波数の追加割り当ての対象になる」(谷脇課長)という解釈を示した。

 MVNO協議会は,MVNOへの参入を検討する事業者の業界団体。テレコムサービス協会が2005年11月に設立した。現在の会員企業は37社。MVNO協議会の会長を務める日本通信の三田聖二社長(写真2)は会合の冒頭で,「携帯電話は1994年の開始から12年かけて10兆円規模の産業に成長した。これは,全世界のパソコンの売り上げの約半分に相当する。これをどうやって伸ばしていくかを検討しているのが,今のMVNOの動きと考えている。産業の規模を今の2倍くらいに拡大し,日本から世界に広げていく重要なプロセスになる」とMVNO市場の今後を展望した。