松下電器産業の「Let's note」シリーズが支持を受けている,“仕事向け”の軽量モバイル・パソコン市場。最近ソニーが「VAIO type G」で参戦し,この市場の潜在的な広さを物語った。国内パソコン・シェアで1番のNECも軽量化を進める。12月4日,「VersaPro UltraLite」シリーズの2機種を発表した。NECビジネスPCの責任者や担当者に狙いを聞いた。
![]() NECのビジネスPC責任者,伊藤正文ビジネスPC事業部長。手に持つのがモバイル・ノート「VersaPro UltraLite」の新機種。撮影=栗原克己 [画像のクリックで拡大表示] |
NECは12月4日,ビジネス向けのノート・パソコン,「VersaPro UltraLite」の新機種二つを発表した。重量970gの「タイプVC」,そしてDVDスーパーマルチドライブ内蔵で重量1130gの「タイプVM」である(表)。出荷は1月下旬の予定。最小構成の希望小売価格は税込で20万2650円(参考:NECのプレスリリース)。BTO方式でユーザーは購入時にスペックを指定できる。
2機種いずれもプロセッサに採用したのは,インテルのデュアルコア・プロセッサ「Core Duo」。「Core Duoを搭載したノート・パソコンの中では,最も軽量」と伊藤氏は強調する。
表●NECが発表した新ノート・パソコン「VersaPro UltraLite」二機種の概要(いずれもNECが例示する基本構成)
|
≪NECの伊藤事業部長にビジネスPC事業の今後を聞く
フルインタビューは「Enterprise Platform」に掲載しています≫
1kg前後に重量を抑えた軽量ノート・パソコンとして有名なのは,松下電器産業の「Let's note(レッツノート)」シリーズ(松下電器のWebサイト)。また,近日中にソニーが「VAIO type G」を出荷する。こちらは最軽量の構成で898g。12.1インチ型液晶ディスプレイを搭載するパソコンとしては現時点で最も軽いという(type Gの記事)。ただ,いずれの機種もプロセッサはインテルのシングルコア「Core Solo」である(12月4日時点)。
今回NECがデュアルコア・プロセッサを採用した理由は,複数のアプリケーションを同時に,かつスムーズに動作させるため。NECによると,Core DuoとCore Soloを比べた場合,Core Duoの方が1.4倍程度処理速度が速いという。
「外出先で使うノート・パソコンといえど,仕事で使うのであればアプリケーションがスムーズに稼働するスペックは必要。現時点ではシングルコアが中心だが,すぐにデュアルコアが求められるだろうと判断した」(NEC ビジネスPC事業部の日比野洋一氏)。来年1月30日に出荷開始となるWindows Vistaの動作を視野に入れると,「冷却処理などを用意する必要があるため軽量化にはマイナスになるが,デュアルコアがなおさら求められる」(同)。
「仕事向き」の堅牢性やセキュリティ対策
仕事での利用で求められるのは処理速度だけではない。「新機種では,多少手荒に扱っても壊れないような堅牢性を確保した」(伊藤ビジネスPC事業部長)。
NECによると,新しい2機種は天面に圧力を逃がすボンネット構造を採り入れたことで,面加圧150kgに耐える。また,パームレスト,キーボードなどの点加圧についても25kgまで耐えるという。「仕事で持ち歩いていると,満員電車で揉まれたり,キーボードにモノが落ちてきたりといったことがある。そうした状況でも致命的な損傷にならないようにした」(日比野氏)。HDDはゴムによるショック・アブソーバーや,加速度センサーによるヘッド退避機能を備え,衝撃に対応する。
ほかの工夫としては,盗難防止ケーブル接続用の穴をステンレスで補強。プロジェクタなどに接続する外部モニター用のケーブル端子に,デスクトップ・パソコンと同じようなケーブル固定用のねじ穴を設けた。「細かい点だが,仕事で使うパソコンであれば欲しい点」(日比野氏)という。
セキュリティ機能としては,「FeliCa」仕様に沿った非接触型ICカードの読み取り機能を付与。ICカードによる認証システムとの親和性を高めた。パームレスト部に指紋センサも搭載できる。USBメモリーへのデータ書き込みを制御するソフトや,OS起動前にウイルスをスキャンするソフトなど,NEC独自のセキュリティ・ソフトも用意する。
処理速度や堅牢性の確保は,軽量化とトレードオフだ。NECは軽量な素材であるマグネシウムを全面的に使用。強度を損なわない程度に穴を空け,「可能な範囲で軽量化できるよう努めた」(日比野氏)。
NECの伊藤事業部長は「出張時,新幹線の車内で見るノート・パソコンは松下(電器産業)のLet's noteばかり。松下は長年,モバイル・ノートに特化してやってきている。家電のトップメーカーであるだけに,やはりすごいと思う」と正直に感想を述べる。続けて「モバイル・ノート分野で圧倒的に強い松下に,NECはこの新機種で挑む」と表情を一変させ宣言した。