電子情報技術産業協会(JEITA)の秋草直之会長は9月15日、協会の定例会見を行った。会見で秋草会長は、本年上半期における電子製品の売り上げの伸びや輸出量の増加から景気は確実に上昇傾向にあるとの見解を示した。

 さらに現在の日本の税制や減価償却制度が国際競争において不利に働いている点を指摘し、政府などに制度の見直しを呼びかけていくことを明言した。

 日本の電子産業における、工場や製造装置設備への投資は毎年増加傾向にある。たとえば半導体製造装置の費用は10年間で600億円から1600億円へと大幅に増加している。「いままで日本の製造業は、生産性を向上させ、可能な限りコストを削減することで設備投資のコストを捻出してきた。しかし現在起きている東アジア各国との製品競争を勝ち抜いていくためには、新規の設備投資が欠かせない。現状では、企業への実効税率に大きな開きがあるなかで、これらの国の企業と同等の投資を実行していかなければならない」(秋草会長)。

 なかでもJEITAが着目しているのが減価償却制度である。韓国や中国、台湾、米国では、償却可能限度額(取得価額のうち何%まで償却できるかを定めているもの)が100%なのに対し、日本は95%。これを100%にして新規の設備投資にあてることのできるキャッシュフローを増加させるよう、政府の対応を望んでいる。

 会見で同氏は、近年液晶テレビやDVDといった最先端製品の製造が国内で行われることが多くなっている事実を明らかにした。税制や減価償却制度の見直しを通じて、設備投資が活発になれば、国内雇用の促進と、GDPの増加による法人税収入の増加が期待できるとの見方も示した。

 また2000年に森総理(当時)が掲げた「e-Japan構想」について、秋草会長はインフラとしてのITの導入は進んできたが、それがほとんど利用されていない現状を指摘。「次期総理には、本当の意味で国民に情報技術が浸透する社会を作ってほしい」と話した。

 なお現在、日本の次期首相となる自由民主党の総裁を選ぶ選挙が進んでいる。総裁選に立候補している安倍晋三内閣官房長官、麻生太郎外務大臣、谷垣禎一財務大臣の3氏について、電子情報産業の振興を考えた際に望ましい人物はだれかを秋草会長に尋ねた。これに対して、秋草会長は「ITの存在が不可欠であるイノベーションを重視している」という理由で安倍氏、「総務大臣の経験があり、ICTについての造詣が深い」という理由で麻生氏の名前を挙げた。

(平田 芳恵=日経コンピュータ