マイクロソフトのヒューストン社長 「日本のIT業界はよく、『キビシイ、キツイ、カエレナイ』の3K職場などと言われる。こんな状況を変えるお手伝いをしたい」。マイクロソフト日本法人のダレン・ヒューストン社長は8月29日、横浜で開催している技術者向け会議「Tech・ED 2006」の基調講演で、こう訴えた(写真)。

 ヒューストン社長は、「日本のITエンジニアは、これからの日本社会で極めて重要な役割を担っている。ところが現状では、決してハッピーとは言えない」と話す。3Kに象徴されるように、現場の業務が過酷であることが大きな要因だ。

 「しかし、ITエンジニアの仕事は本来もっと楽しく、やりがいがあるはず。私が見てきた米国のエンジニアの多くは、週末を返上してまで出社するようなことはしていない」とヒューストン社長はいう。主要な理由として、「米国には強力な技術者コミュニティが多数存在しており、ソフト開発やビジネスをリードしている」(同)点を挙げる。

 そこで「ITエンジニアの地位や満足度を向上させるための支援策」(ヒューストン社長)として、同社が発表したのが「Microsoft Community Ring」である。これは、マイクロソフトがスポンサを務める「技術者コミュニティ支援団体」と共同で、技術者コミュニティの立ち上げや運営を支援するほか、コミュニティに対して勉強会にマイクロソフト社員を派遣する、技術情報を提供する、セミナーを開催するなどの支援策を実施するものだ。

 ここでいう技術者コミュニティ支援団体とは、アプリケーション開発者関連のコミュニティを対象とする「INETA Japan」と、システム管理者や運用管理担当者などのコミュニティが対象の「Culminis」の二つを指す。2002年4月に発足したINETA Japanは、現在73のコミュニティを支援している。マイクロソフトは以前から同組織のスポンサを務めていたが、今後は事務局の運営やコミュニティへの講師派遣などについてもかかわっていく。一方のCulminisは今回、日本で活動を開始する団体である。

 両団体が狙っているのは、Visual Studioユーザーから成る「VSUG」やSQL Serverユーザーが参加する「PASSJ」など、マイクロソフト製品や関連技術のユーザー有志が主催するコミュニティの支援である。「コミュニティの多くは代表者を置いておらず、組織として成り立っていない」(デベロッパー&プラットフォーム統括部の北川裕康IT技術者アドバンステクノロジー本部長)。

 マイクロソフトは、7月にITエンジニア向け出張講座「Microsoft On」を開始するなど、ITエンジニア向けの支援策を相次ぎ打ち出している(関連記事)。MSDNやTechNetといったITエンジニア向けオンライン・サービスの継続的な改善、eラーニングを活用したトレーニングや資格制度の充実なども進めていく。「ITエンジニアへの支援は、当社として大変重要な課題。今後も継続的に取り組む」とヒューストン社長は強調する。