米フリースケール・セミコンダクタ ネットワーキング&コンピューティング・システム・グループのリネール・マッケイ副社長兼デジタル・システム事業部長
米フリースケール・セミコンダクタ ネットワーキング&コンピューティング・システム・グループのリネール・マッケイ副社長兼デジタル・システム事業部長
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 第3世代携帯電話(3G)の基地局やスイッチ/ルータに組み込む通信プロセサで実績を持つ半導体メーカーの米フリースケール・セミコンダクタ。最近ではデジオンや米ジャンゴなどのソフトウエア・ベンダーと提携し,ホーム・ネットワークやSOHO(small office home office)ネットワーク向けチップ事業を積極的に展開している。このほど来日したリネール・マッケイ副社長兼デジタル・システム事業部長(写真)に,市場参入の狙いや戦略を聞いた (聞き手は加藤雅浩=日経コミュニケーション)。

--なぜ今,ホーム・ネットワーク/SOHO向けチップ市場に注力するのか。

 売り上げの成長率が高いからだ。年平均で10%以上の伸びを見込める。現在の主力ビジネスは,売上高の半分近くを占める無線基地局などのインフラ向けや,スイッチ/ルーターなどエンタープライズ(企業)向けだが,成長率は7~8%にとどまる。安定成長している市場ではあるものの,高成長はもう見込めない。

 ホーム・ネットワークやSOHOネットワーク市場の高成長は,ブロードバンドの普及が背景にある。これはグローバルな潮流だ。現在は韓国や日本が先行するなど地域別に差はあるが,それも1年半から2年くらいでなくなるだろう。

--フリースケールの強みは。

 インフラやエンタープライズの市場では,ネットワーク,コミュニケーションとコンピュータの融合(コンバージェンス)が進んでいる。その流れの中で,さまざまな通信機能が一つのボックスに集約されつつある。通信プロセサに必要な機能と性能が飛躍的に高まり,我々はPowerPCコアやDSP(ディジタル信号処理プロセサ)コアを組み込んだチップ製品で実現してきた。

 ホーム・ネットワークとSOHOネットワークも例外ではない。ホーム・ゲートウエイやSOHOスイッチ/ルーター,IPセットトップ・ボックスといった機器向けの通信プロセサでも,高性能化と高機能化の要求は高まる一方だ。例えばホーム・ネットワークの業界標準規格「DLNA(Digital Living Network Alliance
)」では,実現すべき機能が非常に多い。

 またセキュリティでは,以前は暗号化機能があれば十分だったが,今はコンテンツ保護機能が欠かせない。我々のチップ製品ならその要求に応えられる。

 実際,これからの主流になると見られるコンテンツ保護機能「DTCP-IP(digital transmission content protection over internet protocol)」のアクセラレータ機能を内蔵している。競合他社の大半がソフトウエアで実装しているDTCP-IP機能をハードウエアで実現することで,通信プロセサの能力をより付加価値のある機能に振り分けることができる。

--具体的にはどのようなソリューションとして提供するのか。

 通信プロセサを搭載したリファレンス・ボードとして提供する。このボードは動作するミドルウエアを代えることで,あるときはホーム・ゲートウエイになり,SOHOスイッチ/ルーターあるいはIP-PBXにもなる。ミドルウエアの開発ではデジオンや米ジャンゴといったベンダーと提携し,ハードとソフトを一体で提供する。顧客となるシステム・ベンダーの開発期間を短縮することが狙いだ。

 SOHO向けソリューションでは通信事業者も顧客となる。SOHOにはエンタープライズと違ってIT部門が存在しない。そこで事業者がスイッチ/ルーターやIP-PBXといった機器をSOHO向けにリースして,月々の定額料金を徴収するというビジネスが考えられるからだ。